<アジアCL:G大阪3-0アデレード>◇決勝第1戦◇5日◇万博

 G大阪の西野朗監督(53)が、日本人監督では初のアジア王者へ王手をかけた。攻撃的なスタイルを貫いて第1戦を3-0と大勝し「自分が描いた最高の結果」と喜んだ。夏場に公式戦10戦未勝利とチーム作りに苦しみながらも、短期間で再建に成功。世界基準を目標にしてきた指揮官が、第2戦を経て、いよいよクラブW杯で世界との真剣勝負に挑む。

 派手なガッツポーズはない。西野監督は試合が終わると、左手で額に浮かんだ汗をぬぐって勝利の余韻に浸った。前半で2点差を奪っても守る意識はない。後半18分にFW山崎、同24分にFWロニーと攻撃的なカードを投入。最後までスタイルを貫いて、アジア王者へ大きく前進した。

 西野監督「自分が描いた最高の結果が出た。欲を言えば4点目が欲しかったけどね。いい動き出しと、パス回し。スムーズに試合が進んだ。今日で(決勝が)終わってくれればいいけれど。敵地でも自分のスタイルを出せるようにしたい」。

 世界の扉を開くための挑戦だった。前夜、食事の席でマンチェスターUの映像を流した。ACL制覇を成し遂げ、クラブW杯初戦を突破すれば、準決勝でマンUと対戦できる。アジア王座は夢対決に向けての通過点。冗談交じりに「マンUのスカウティング(調査)をそろそろ始めないとな」と話したという。

 ここまでは、いばらの道のりだった。7月下旬にFWバレーが電撃退団。夏場に公式戦10戦未勝利と苦しんだ。西野監督も大きな壁にぶつかった。「バレーが抜けて成績が悪いということは認めたくなかったが、影響はあった。いろいろ模索した」。ACL準々決勝アルカラマ戦(9月17日)でようやく11戦ぶりの勝利。苦境から脱出したのは「世界と戦いたい」という強い思いだった。

 自身の仕事を「日本サッカーの発展と、世界で評価されたいという自分へのアプローチ」と表現する。将来的には「中東の国の(代表)監督をして、日本と試合をするのもいい」と明かしたこともある。好きなクラブは名門バルセロナ。信念を曲げず、手にした1勝は尊い。アトランタ五輪でマイアミの奇跡を演じた男が、再び大舞台へと近づいた。【益子浩一】