<アジアCL:鹿島2-0上海申花(中国)>◇18日◇1次リーグ◇G組◇カシマ

 鹿島の大型新人FW大迫勇也(18)が、1得点1アシストで「救世主」になった。上海申花(中国)戦の前半45分にMF野沢拓也(27)の先制点をアシスト、後半35分にはACL日本人最年少記録でプロ公式戦初ゴールを決めた。全2得点に絡む活躍で2連敗中のチームを2-0の勝利に導いた。

 冷静に、確実に左足を振り抜くと、放たれたボールはプロ公式戦初ゴールとなって突き刺さった。後半35分、試合を決めるダメ押し弾。チームを連敗脱出に導いた大迫は「マルキーニョスがいいボールを出してくれたので、決めるだけでした」と相変わらずの落ち着いた口調で振り返った。

 ゴールへの嗅覚(きゅうかく)が瞬時に働いた。マルキーニョスの左からのクロスを受ける瞬間「前でもらおうとしたけどDFとかぶったので後ろに動いたら、いいボールが来た」。あっさりマークを引き離し、値千金のゴールを生み出した動きは点取り屋そのものだった。

 17日夜に先発を告げられた。アジア制覇へ負けられない一戦でプロ初先発。MF小笠原やDF岩政の「思い切りプレーしろ。ミスしたらおれ達が取り返すから」という言葉で緊張がほぐれた。前半45分には青木のパスを受けて反転し、野沢の先制点をアシスト。「拓さん(野沢)の動きが見えた。パスが少し強くなったけど決めてくれた」と笑みを浮かべた。

 敵が強いほど、大舞台になるほど燃える。鹿島と浦和の争奪戦となった昨年、鹿島入りを決めた際、鹿児島城西高の恩師小久保監督に「浦和のサポーターを相手に試合をしてみたい」と決意表明した。ACLという大舞台で、名門上海申花が相手でも動じなかった。

 7日のリーグ開幕の浦和戦でベンチ入りしながら出場がなかった。11日のACLのアウェー水原戦は遠征に帯同しながらベンチ外。小久保監督が「韓国から帰国後に電話で話したら、出られずに不安そうだった。そんなことを言うのは珍しい」と証言したように、人知れず悩んでいた。だが、そんなモヤモヤもこの日の一発回答で一掃。オリベイラ監督も「素晴らしい能力を持っている選手。将来は日本を背負う選手になるかもしれない」と絶賛した。

 試合後、戸惑いながら観客席に上がった大迫は、サポーターに向けて拡声器で「チャンスが来たら、また結果を出せるように頑張るので応援よろしくお願いします」と宣言。「ゴールはうれしいけど、まだ始まったばかりなので」。不振の王者を救ったこの日のゴールは、明るい未来への序章にすぎない。【菅家大輔】