J2札幌がC大阪に引き分け、3戦負けなしとなった。前半39分に、CKから不運なオウンゴールで失点も、後半5分に、プロ初先発のMF前寛之(19)が初ゴールを決め同点に追いついた。白星は挙げられなかったが、J1からの降格組との連戦は、1勝1分け。これで7勝6分け3敗の勝ち点27になり、第11節以来5節ぶりに、プレーオフ圏内の6位に再浮上した。

 負傷者続出の中、代役で入った若い力が、結果を出した。0-1の後半5分、MF稲本の右からのサイドチェンジを左サイドで受けたプロ初先発の前寛が、右サイドからカットインして、思い切ってシュートを放つと、ボールは相手DF山下に当たり、ゴール左上に突き刺さる、貴重な同点弾となった。

 「取った瞬間、頭が真っ白で、何をしていいか考えられなかった。サポーターの声も、決めた瞬間は何も聞こえないぐらい興奮していた」。その後も献身的に攻撃に参加したが、後半26分に右ふくらはぎをつって途中交代となり「ドーム独特の雰囲気と、初先発ということで必要以上にこわばっていたのかも」と苦笑いした。

 初の3連勝こそ逃したが、昇格争いに絡む可能性がある難敵に勝ち点3を与えず、勝ち点1を分け合ったのは大きな意味がある。しかも荒野、堀米の主力サイドハーフが負傷離脱。C大阪戦に向け、バルバリッチ監督が最も時間を費やし、トレーニングしたのが新たな左右MFの連係確認だった。それだけに指揮官も前寛の働きに「19歳と若いが、しっかり自分の良さをだしてくれた。非常に良かった」と喜んだ。

 ベテラン2人の“アシスト”も生きた。この日、出番はなかったが今季初のベンチ入りを果たしたMF小野が、ハーフタイムに「もうちょい中に入ってシュートを打つのもありだよね」とアドバイス。同5分に稲本からのサイドチェンジがくると「イナさんのパスを受けた瞬間に決めていた。縦に仕掛けるのもありだったけど、伸二さんの言葉があったから思い切っていけた」と振り返った。W杯コンビの経験と技術が、貴重な1点を呼び込んだ。

 これで5節ぶりのプレーオフ圏再浮上を果たした。「J1昇格のために次もその次の試合もチーム全員で頑張っていきたい」。ケガ人が出ても、新たな力でカバーする。札幌が着実に進化を続けている。【永野高輔】