仙台レディース(なでしこ)が、三たび決勝進出の壁を破れなかった。INAC神戸(なでしこ)に延長の末、1-3と敗れて3大会連続の4強止まり。1点を追う後半39分に、MF川村優理(27)がFKを頭で合わせて同点に追いつく粘りを見せたが、延長に2失点した。決定的チャンスを生かせず、今季の課題を克服できないままシーズンを終えた。退任が決まっている千葉泰伸監督(45)は、最後の采配となった。

 優勝して千葉監督を胴上げする、仙台Lイレブンの強い思いは届かなかった。同点に追いついて延長にもつれ込む熱戦も、結局は2点差で初の決勝進出を阻まれた。主将のMF嘉数飛鳥(27)は「勝つチャンスがあったので、悔しい終わり方。今はそれしか思えない」と肩を落とせば、大黒柱の川村も「悔しい思いしかありません」と寂しそうな表情を浮かべた。

 シュート数は、INAC神戸の15本を上回る17本。決定力と勝負強さで劣った。川村は「チャンスがある中で決め切れなかった」と反省した。今季の仙台Lはリーグ戦18試合で29得点。昨季のレギュラーシリーズ18試合40得点から11減った。大きな要因は、決定機をモノにできなかったこと。この日も延長前半開始直後など、絶好の得点機を生かせないシーンが目立った。

 センターバック(CB)の市瀬菜々(19)が相手と接触し右股関節を痛め、前半21分にベンチに退いた。ボランチの川村が急きょCBに入る緊急布陣で、その後99分間を戦い抜いた。千葉監督は「選手たちは勝つためにアグレッシブに戦ってくれた」と評価する一方、チーム創設の12年から5年間の思い出を問われ「一番悔しい思いをしたのは今日です」と、最後の采配となった現実を受け止めた。

 今季掲げた初タイトル獲得は、越後和男新監督(50)を迎え、マイナビ仙台レディースにチーム名が変わる来季に持ち越しとなった。千葉監督は「今後につながる試合はできたと思う」と夢を託した。川村は「この悔しさを忘れちゃいけない」と、自身にもチームにも言い聞かせるように言った。ゴール前のプレー精度や、劣勢をはね返す強さ。課題は少なくないが、千葉監督の築き上げたチーム力をベースに、新たなスタートを切る。【久野朗】