Jリーグが新しい時代に突入した。17年から10年2100億円超という巨額の放送権契約を結び、財政的な基盤を整えた。ここから昨年12月のクラブW杯決勝であのRマドリードを追い詰めた鹿島のように、Jリーグそのものも世界に打って出る。14年に就任し2期4年目。圧倒的なスピード感とスマートかつ大胆なリーダーシップで、停滞していたJリーグを大改革する村井チェアマンの元日インタビューを、たっぷりとお届けする。

 -昨年は最後に、鹿島がクラブW杯で素晴らしい戦いを繰り広げました。Jリーグの力、可能性を世界に示してくれたのではないでしょうか

 日本はまだ個々の技術が高くないので、チーム力でカバリングするということが語られて久しいですが、個々の技術を世界に対して見てみても、そんなに遜色はないと感じました。徐々にではありますが、個々の技術もフィジカルも、決して遜色のないレベルまできていると思いました。

 大事なのは向かっていく気持ち。鹿島はボールを後ろで回し、安全に安全を重ねるような戦い方ではなく、積極的に(相手DFの)裏を突いていく戦い方を選びました。どんなに押されても、前を向いて攻めていく姿勢を崩さなかった。世界に対して引け目を感じるようなことなく、前を向いて戦う姿勢が試合のたび、だんだんと増してきた。前に向かって戦うんだというものが明確に出た、その結果としてつかんだ準優勝。俺たちもできると思ったチームが多かったのではないでしょうか。

 -そのクラブW杯は、今年からUAEのアブダビ開催となります。開催国枠がなくなりクラブW杯出場にはアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を制してアジア王者にならなくてはなりません

 15年のクラブW杯で3位となった広島もそうでしたが、年末のクラブW杯までにチームを編成してから1シーズン、1年間かけて世界で戦うことのできるレベルまで引きあげていくというのではチーム作りが遅い。もっとスピードアップしていく必要があります。シーズンのスタートが大事になります。特にACLに出場するチームは、チーム作りにおける立ち上がりの部分がとても、大切になってくると思います。

 -そのACLでは07年の浦和、08年のG大阪以来、Jリーグ勢の優勝チームが出ていません。ここ数年は苦戦が続いています。Jリーグがさまざまなサポート、バックアップ策で手を打っているにもかかわらず、実を結んでいません

 昨年11月に、ACLの決勝第2戦をアルアイン(UAE)に行って見てきました。アルアイン-全北(韓国)戦でしたが、この決勝の舞台に必ず日本チームが立つことを前提に行きました。相対的にアジアのレベルは高くなっています。もちろん、Jリーグのチームが簡単に勝てるものではないと思いましたが、決して見劣りするものではないとも感じて帰ってきました。

 リーグ戦を戦いながら、ACLを戦う日程的な厳しさもあると思いますが、心の中に言い訳があると絶対に勝てません。昨年末、鹿島はJリーグ・チャンピオンシップからクラブW杯まで連戦でした。中2日で試合が続くこともありました。それでも、絶対に勝つんだという強い思いがあれば、あれだけの戦いができると証明してくれました。

 もし、万が一、ACLに出ることで(リーグも含め試合が増え)日程的に損をするというような、ちょっとした心の緩みがクラブ関係者や選手にあったりすれば勝てません。すべてのタイトルを取りに行くという強烈な思いがあれば、日本のチームにできないことはないと思うのです。【聞き手・八反誠】

 ◆村井満(むらい・みつる)1959年(昭34)8月2日、埼玉県生まれ。浦和高サッカー部ではGK。早大法学部に進み、日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)入社。04年にリクルートエイブリック(現リクルートエージェント)代表取締役社長に就任し11年まで務める。その後、リクルート香港法人の社長、会長を務め、08年7月にJリーグ社外理事に。14年1月に第5代チェアマンに就任した。リーグを経営する上で大切にしている言葉は「魚と組織は、天日に干すと日持ちが良くなる」。就任後Jリーグを中心に、毎年100試合以上に足を運び、現場の空気を感じている。