志願の実戦復帰だ。熊本で2次合宿中の札幌MF稲本潤一(37)が、今日16日に予定している練習試合に出場する。昨年6月4日千葉戦(札幌ドーム)で右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂してから、実に257日ぶりの実戦。出場は10分ほどと時間は限られるが、大ケガからの完全復活へ、ベテランがいよいよ試運転を開始する。

 “世界を知る男”が定めた照準は、10日後に迫った開幕に他ならない。15日、熊本県民総合運動公園補助競技場でフルメニューを消化した稲本は「そろそろ次の段階に行かないと、ステップアップしていけない」。全体練習に合流してから、まだ5日目。周囲の心配をよそに、首脳陣へ早期の実戦参加を志願した。

 「イナが『やりたい、やりたい』って言っているから」と苦笑いの四方田修平監督(43)も「本人と少し話して決めたい。短めの時間なら」と、ベテランの熱意についには折れた。

 この日、ハーフコートで行った戦術練習では、DF進藤ら若い選手に的確な指示を飛ばすなど、ピッチ上での存在感は大きい。「開幕戦は34試合のうちの1つだから絶対ではないけど、目標にしている」と話す37歳は「膝のひねり具合、予想していない動きへの対応、当たりの強さは、実戦をやってみないと分からない。そこを、確認できれば」。開幕戦へのテンカウントが始まったと同時に、復活への階段を1段上がる。【中島宙恵】