東京電力福島第1原発事故の対応拠点として使われてきたサッカー施設「Jヴィレッジ」が、今月いっぱいでその役目を終える。再開に向けた復旧工事が本格化し、日本サッカー協会(JFA)理事も務める上田栄治副社長は「いいニュースを発信し、これからはわれわれが地域を活性化できるようになりたい」と復興への思いを口にする。

 1997年に国内初のナショナルトレーニングセンターとしてオープンし、2006年にはエリートを育成する中高一貫の「JFAアカデミー福島」が敷地内に開校した。だが、6年前の震災で原発事故が起きた後は廃炉拠点になり、アカデミーは静岡県御殿場市へ移転。サッカー施設としての機能を完全に失った。

 当初は復旧のめども立っていなかったが、再開の機運が高まったのは4年前。20年東京五輪の開催が決まり、上田副社長は「いいタイミングで大きな後押しになった」と言う。五輪を見据えた再整備計画がまとまり、大会前に男女のサッカー日本代表が合宿することも正式に決定した。

 昨年3月に東京電力の福島復興本社がJヴィレッジから移転し、11月には廃炉拠点としていた本館が閉鎖。今月末まではバスの発着地として使われる。「最大で7千人の作業員がここを基地にしていたので、ガラッと様変わりした」と雰囲気の違いを肌で感じている。

 昨年8月から募っている寄付金は、既に目標額の7億円の半分を超えた。来年の夏に一部オープン、19年4月には全面営業再開する予定。「100人以上を新たに雇用しないといけない。人手不足が課題」という問題も抱えるが、再出発へ一歩ずつ踏み出している。