<ゼロックス杯:広島2-2(PK4-3)鹿島>◇1日◇国立

 11冠王者の鹿島が審判の判定で大混乱に陥り、PK戦負けした。前半12分にDF岩政が退場になったが、後半序盤に2点を奪って優勝を手中にしかけた。だが後半33分に不可解な判定でPKを与えたのをきっかけに追いつかれ、PK戦でもGK曽ケ端の2度のセーブを無効とされて敗れた。試合後は抗議をしていないDF大岩が1発退場。8日の開幕札幌戦ではセンターバック2人が出場停止と、思わぬ形でリーグ開幕を迎えることになった。J2勢として初出場の広島が初優勝を飾った。

 試合終了が混乱の合図だった。積み重なる判定への不満にGK曽ケ端が怒りをあらわにすると、家本主審からすかさず警告。MF中後が主審に歩み寄ると、また警告。怒った鹿島サポーター数十人がピッチになだれ込む。警備員に守られながら審判団は退場しようとしたが、家本主審は控室へ入る寸前にきびすを返して鹿島ベンチ前へ進み、レッドカードを突きつけた。その相手は「彼(家本主審)とは言葉も交わしていない」というDF大岩。開幕戦の出場停止が確定した。

 発端は後半33分にPKを与えた場面。ゴール前で広島FW久保と競った中後が倒れ、さらに久保に引っ掛かるようにMF青木が転倒した。だが判定は青木のファウル。PK戦ではGK曽ケ端が2度も止めたが、いずれもやり直し。「蹴る前に前へ動いたと言われた。でもGKからしたら普通の動きの範囲」(曽ケ端)。さまざまな伏線が試合後の騒動に発展。DF内田は「中国戦みたい」と北朝鮮人主審が不可解な判定を連発し物議を醸した東アジア選手権を思い起こした。

 同点となった2失点目など守備面で課題を残し、公式戦連勝も12でストップ。だがこの一戦の勝敗よりも、開幕戦へダメージが大きい。左足首痛から復帰したDF岩政は前半12分に2枚目の警告を受けて退場。「僕の責任」と反省したが札幌戦では昨年2冠達成時のセンターバック2枚が出場停止となる。

 代役は本来はボランチの中後と、今季移籍してきたDF伊野波。連係面も含めて未知数だ。鈴木満取締役強化部長は「やるせない気持ちを引っ張って開幕を迎えて、2人もいないんだから」と心の傷も懸念した。

 オリベイラ監督は「こういうことが起こるのは、今年は雲行きがおかしいと推測せざるを得ない」と不吉な予感さえ感じていた。週明けにPKの判定を中心に意見書を提出する。だが判定は覆らない。モヤモヤとした気持ちで、王者が開幕を迎える。【広重竜太郎】