<J1:札幌2-1柏>◇第3節◇30日◇日立柏サッカー場

 コンサドーレ札幌がJ1復帰3戦目でリーグ戦初勝利を飾った。柏に2ー1と鮮やかな逆転勝ちだ。前半12分に先制を許す苦しい展開も、MFクライトン(30)が絶妙アシストで全得点を演出。同38分にFKでDF西嶋の頭に合わせると、後半21分には浮き球でMF西の逆転弾をおぜん立てした。J1での勝利は、02年11月の広島戦以来、実に1947日ぶり。20日のナビスコ杯から公式戦2勝1分けと完全に波に乗ってきた。

 ゴール裏に咲き乱れた桜吹雪をほおに張り付けた“褐色の金さん”が、とびっきりの笑顔でサポーターの下に駆け寄った。勝利を呼び寄せたクライトンは、得意の“グ~”ポーズで歓声に応えた。「この初勝利とても大きな1勝。この初勝利は大切」。全ゴールを演出する活躍で、北海道に一足早い「開花」宣言をもたらした。

 0-1で迎えた前半38分、右サイドからのFKはDF西嶋の頭を狙い撃ち。今季初勝利となった23日のナビスコ杯川崎F戦の2点目と同じ「クラニシ」コンビで追い付いた。後半21分には、中盤で相手DFから球を体を張って奪い取り、DFの裏へ絶妙な縦パス。今度はMF西が走り込み、連続の「クラニシ」弾で柏の息の根を止めた。

 今季最も遅くチームに加わった男が攻守の柱となった。ブラジルの名門アトレチコ・パラナエンセの主将の座をなげうってまで挑んだJ1。「オレのボールを奪う能力と、意表を突くパスは札幌で必ず生きる」。30歳の再挑戦にも自信はあった。10歳から6年所属していた故郷ポルトアレグレのフットサルクラブでは、2歳下にブラジル代表MFロナウジーニョがいた。

 「オレに人マネは向かない」。どんなにあがいても追いつけない天才と育ち、テクニックでは1番になれないと気づいた。そこで高い身体能力を生かし、守備からの展開力を求められるボランチとしての能力を高めてきた。だからこそ攻撃の形をつくれず苦戦する札幌の悩みは、すぐに察知。攻守のつなぎ役として異なる環境でも短期間でフィットさせる順応力があった。

 これで札幌は2186日続いた悪夢から目覚めた。J1の敵地では13連敗。J1では1度も勝ったことのなかった鬼門を破り、新たな歴史への扉を開いた。三上強化部長は「この柏戦が本当のスタートライン。強烈な柏のアウェーで結果を出せたことは非常に大きい」と話した。開幕連敗時は、7選手が負傷しており、万全な船出ではなかったが、この日、DFの要である曽田が戦列復帰。苦悩の3月を克服した札幌が、北上する桜前線とともに逆襲の4月に突入する。【永野高輔】