日本サッカー協会の犬飼基昭新会長(66)が、人気低迷にあえぐ代表復活へサポーターとの密着性の重要さを訴えた。12日、同協会は評議員会を開き、第11代会長に犬飼氏を選出した。J1浦和社長時代から“剛腕”と呼ばれた新会長は、三菱自動車時代の4年にわたる欧州生活で目の当たりにしてきた本場欧州のプロ魂を基に、強いプロ意識こそが、国民の代表チームへの愛情につながると独自の考えを披露。就任初日にして明確な指針を示した。

 記者会見では緊張を隠せなかった犬飼新会長が、協会を引き揚げる間際に熱い思いをほとばしらせた。代表人気への考えを聞かれ、力強く明確に考えを示した。「もっとプロ意識を持つことだ。まだ足りないと思う」。

 欧州滞在時代、本場のサッカーに触れ、国民がどうして代表チームに引かれるかをつぶさに感じてきた。「ドイツのクラブチームは土曜に試合があると、日曜午前10時には選手がテレビに出ていた。サポーターも呼ばれたスタジオで、画面をみながらプレーを振り返り、どういう気持ちでやったのかを説明していた。サポーターの質問も受けていた」。

 恐れずメディアに出ることで、良い時も悪い時も、本音でサポーターに語るからこそ、国民は代表チームに感情移入ができる。持論をふまえて日本サッカー界に目を向け「選手をスポイルしすぎだ。試合翌日のクールダウンなど、そこまでしなくてもいいと感じることはある」とはっきり言った。

 メディアを使い、失敗も成功も含めて自分をさらけだすことで、サポーターの理解を得られる。「何の心配もなく戦えるようにしたい。けがにもすぐに対応できるように」。その上で、選手には内面をさらけだしてでも観客を魅了できる強いプロ意識を求めた。

 報道陣に囲まれ熱く語るあまり、川淵前会長が帰宅しようとしているのを足止めしていると気づかなかった。あわてて車に乗り込むと、笑顔の川淵前会長に「それじゃあ、オレが新会長を見送るよ」と言葉をかけられ、苦笑いしつつ車内から丁寧に会釈。サッカーへの情熱を受け継ぎ、犬飼色の日本サッカーが動きだした。