<J1:千葉1-0神戸>◇第19節◇26日◇神戸ユ

 巻が泣いた-。千葉のエースFW巻誠一郎(27)が、今季初の決勝弾を決めた。前半43分にPKを外しながらも、後半30分には絶妙のタイミングでDFの裏に飛び出し値千金のゴールをたたき込んだ。神戸を1-0で破り、5月17日大分戦以来、約2カ月ぶりの勝利を呼び込んだ。試合後は感極まって涙を流しながらサポーターに「必ず残留します」と宣言。日本代表としてW杯ドイツ大会など大舞台を踏んだ男が、人目をはばからずに号泣した。

 巻のほおを大粒の涙が流れ落ちた。試合後、たった1人でゴール裏のサポーター席に向かい、拡声器を使って「必ず残留します!」と誓った。サポーターから大歓声を受けると、抑えていた「思い」をこらえ切れなくなった。W杯も経験した男がリーグ戦で1勝しただけで、あふれ出る涙をぬぐうこともせずに男泣きした。

 巻

 PKを外してしまったんで。絶対にゴールを決めてやろうと…。そういう気持ちでプレーしていた。最下位ですし、重圧もあったので。あきらめてはいけない、何とかしよう、そういう思いを強く持っていました。

 苦しんだ。前半43分にPKを外した。最下位に沈み約2カ月、5試合も勝利から見放されていた。中心選手として、責任を一身に背負い込む毎日…。この日も重圧と戦った。後半30分にDFの裏に飛び込み、MF中島のスルーパスをポスト右に当てながら決めると、興奮を抑えきれなくなった。必死で走り回ったからこそ、最後に最高のボールが飛び込んできた。

 これまで、個人的な感情は隠してきた。28日から日本代表候補合宿が始まるが、巻は招集されていない。岡田監督から「巻と矢野(新潟)は特徴が分かっている」と信頼を受けているからこその“落選”だったが、心情は穏やかではなかった。それでも低迷するチームのため、愚痴をこぼすこともせずに練習を続けてきた。

 巻

 そりゃ(代表)メンバーに選ばれた方がいいですけど。でも今はこういう事情ですから。チームを何とかすれば、また戻れる。きっかけをつかみたい。

 2カ月ぶりの勝利を奪っても、まだ最下位には変わらない。残留圏の15位清水とは勝ち点9差もある。それでも「少しだけでも自信はついた」と巻は言う。長いトンネルの出口は、少しだけ見えた。【益子浩一】