<J1:磐田3-0清水>◇第6節◇19日◇エコパ

 低迷磐田に救世主が現れた。新加入した韓国代表FWイ・グノ(24)が、Jデビュー戦で2ゴールを決めて、チームを今季初勝利に導いた。クラブ史上、助っ人のデビュー戦ゴールは02年のFWグラウ以来7年ぶり。今季公式戦7戦白星がなく、試合のたびにワースト記録をつくったチームにとって、浮上の糸口となる貴重な勝利。今季初めて最下位から脱出した。

 無我夢中で飛び込んだ。後半10分、イはFW前田の左クロスに相手DFより一瞬早く飛び込み、左ボレーで突き刺した。イレブンにもみくちゃにされても、笑みは消えない。後半28分には、再び前田が頭で競り、裏に抜けたボールに反応。相手DFを寄せ付けず右足で決める。「今日のゴールは前田をはじめ、みんなのおかげ」と控えめだが、前田から「ゴール前の嗅覚(きゅうかく)がすごい」と絶賛された。

 欧州リーグ移籍を目指し、3月にフランスリーグのパリSGに練習参加した。だが、契約寸前で破談。Kリーグの移籍市場は閉まり、行き場を失ったところに磐田から声をかけられた。「こんなにいい環境でやらせてもらえて、磐田に救ってもらった」と、クラブ関係者に感謝の気持ちを語っていたほど「恩返し」に燃えていた。

 7日に合流したばかりだが、1日でも早くチームに溶け込もうとする姿勢が、初戦から結実した。仲間を覚えるために、クラブのオフィシャルブックをロッカーと自宅に置き、名前、ポジション、プロフィルを練習前に確認。手帳には日本語の単語を書いて、日常会話を覚えた。

 昨季からの低迷を引きずるチームの起爆剤となり、今季初勝利、最下位脱出の立役者となった。後半38分にベンチに退く際には、サポーターから「イ・グノコール」がわき上がった。「得点までのプレーはまだよくない。チャンスには最大限の集中力を持たないと」。救世主のにおいを全身から漂わせていた。【栗田成芳】