浦和の日本代表DF田中マルクス闘莉王(28)が、郷里のブラジルに「トゥーリオ・ミュージアム」を開設することが27日、分かった。サンパウロ州にある親族の邸宅を改修して今年8月にオープン予定で、高校やJリーグ、日本代表で手にしたトロフィーやジャージー、スパイクなど思い出の品を展示する。現役Jリーガー個人の博物館となれば史上初。日本-ブラジル友好の新たなシンボルにもなりそうだ。

 闘莉王にとって自身のミュージアム設立は、夢のプロジェクトだった。03年に日本国籍を取得したが、ブラジルは生まれ育った故郷。日本・ブラジル移民100周年だった昨季、現地在住の親類や知人らの希望もあって、設立への準備を始めていた。オフに帰郷した際に建設予定地を決め、設計担当者とも打ち合わせを済ませていた。「8月には完成する予定です。一般の人にも公開したい」と楽しみにしている。

 日系人の父とイタリア系ブラジル人の母を持つ。渋谷幕張高(千葉)のスポーツ留学生として16歳で来日した。ミュージアムには、高校時代をはじめ、かつて在籍した広島や水戸、04年アテネ五輪や06年からの日本代表で実際に使用したジャージーやスパイクなど「お宝」を展示予定。闘莉王は「トロフィーとか、もういろんなものを送っているところです」という。

 96年に、当時横浜Fだった前園真聖の記念コーナーが故郷・鹿児島県東郷町(現薩摩川内市)役場に設けられたことはあるが、個人ミュージアム設立は現役Jリーガー初。背景には、家族や自分をはぐくんでくれた郷里への感謝の気持ちがある。

 昨季は移民100周年記念制作の音楽CDに選曲や出演で携わり、「移民があって、僕が生まれた。日本では代表戦に出場できる。本当にありがたいです」と話していた。ブラジルには約150万人の日系人が住み、Jリーグや代表戦で活躍する闘莉王の人気は高い。ミュージアムが両国交流の新たな象徴になりそうだ。

 6月にはW杯アジア最終予選の大詰めを迎える。「今年は大事なものが見えてくる年。みんなに幸せを与えられるように頑張りたい」という闘莉王。10年W杯のメモリアルジャージーを展示品に加えることが、今の目標の1つだ。【山下健二郎】