<J1:神戸2-2名古屋>◇第11節◇10日◇ホムスタ

 怒りのロスタイム同点だ!

 名古屋が執念で神戸と2-2で引き分けた。怒りの主はGK楢崎正剛(33)。1-1の後半17分に不可解な判定でPKを取られて激高。飯田淳平主審(27)とPKを得た神戸FW茂木に詰め寄った。このPKを決められ1点リードを許したが、後半ロスタイムに自身のFKからFW津田知宏(23)の同点ゴールを生み出し、何とか勝ち点1を手に入れた。

 終了間際の同点劇は守護神の怒りのフィードが起点となった。時計は「46分」。楢崎は自陣のFKを、前線で張る長身FWめがけて蹴った。ボールは体を張った巻の頭を経由し、最後はFW津田が右足で劇的にネットを揺らした。楢崎は「ホント、巻と津田には感謝してます」。頼もしい後輩への賛辞を忘れなかった。

 後半17分に与えたPKが、楢崎に火をつけた。裏に抜け出した神戸FW茂木が追ったボールはラインを割りかけていた。だが、シュートコースを防ごうと前に出ていた楢崎に対し、茂木は体をぶつけるようにして倒れた。シミュレーションのように見えたが、この試合がJ1通算2試合目の主審だった飯田氏はPKを宣告。猛抗議した楢崎はマルセウにPKを決められると、わざわざ茂木に歩み寄ってまくし立てるほど感情を高ぶらせた。

 楢崎

 ゴールラインを割っている状態なのに相手(茂木)が欺こうとして、それに審判が乗ってしまった。それもサッカーの一部と言ってしまえばそれまでだけど、正々堂々とやってほしい。

 いつもなら、どんな状況でもすぐ切り替えて次に備える守護神も、この日ばかりは「(試合中)ずっと引きずったままでした」。やり場のない怒りとともにプレーしていた。GKというポジション柄、自らのゴールでストレスを晴らすことはできない。だが、同点劇の起点になってモヤモヤを晴らした。

 王手をかけていたJ史上初の通算100完封の偉業達成は次節以降に持ち越しとなった。それでも、チームはGWからの過密日程を3勝2分けと無敗で乗り切った。ストイコビッチ監督も「アウェーでの勝ち点1は大きい」と評価。珍しく怒りに震えた守護神のパワーが、名古屋にとってこれ以上ない起爆剤となった。