<天皇杯:G大阪2-1仙台>◇準決勝◇29日◇国立

 「09年ベガルタ劇場」がフィナーレを迎えた。J2勢初の決勝進出を目指した仙台が、G大阪に1-2で敗れ4強で敗退した。前半3分に公式戦17試合ぶりの先制点を献上。後半13分にFW中原貴之(25)のゴールで追いついたが、7分後に再び突き放され力尽きた。J2リーグ51試合+天皇杯5試合。ベガルタ戦士が、躍進の09年シーズンに幕を下ろし、いよいよ来季7シーズンぶりのJ1に挑む。

 試合終了の笛を聞くと、仙台イレブンの体からフッと力が抜けた。ひざに手をつき、座り込み、天を仰ぐ選手-。だが、表情からは充実感がにじみ出た。約8000人のサポーターからも敗戦と同時に拍手を送られ、手倉森監督は「相手の方が1枚も2枚も上手。いい経験をさせてもらいました」。こん身の力をぶつけ、いさぎよく散った。

 この日が今季56試合目。疲労した体にムチを打った試合で、前回覇者G大阪からJ1の厳しさを学んだ。軽やかなパスワークで支配され、MF千葉は「いいように人と人の間でパスを回された。試合中に解決策が見つからなかった」。MF梁も「ボールの持ち方に差がある」と舌を巻いたが、DF菅井が「判断の速さとかパススピードの差を経験できて良かった。来季、戦いながら慣れたい」と話すなど多くの糧を得た。

 選手が課題を見つけた一方、首脳陣は来季に向けた戦いに入っている。来年1月7日から20日まで、手倉森監督と丹治強化部長がブラジルに渡る。J1に通用する新戦力発掘のためで、同国でプレーするFWとMFを視察。さらに同22日からグアムキャンプをスタート。「例年より早めに始動し、じっくりチームを作りたい」。指揮官の頭では来季の構想が進んでいる。

 J1昇格、J2優勝、天皇杯4強進出-。リーグ51試合と天皇杯5試合を戦い抜いた。手倉森監督は「始動まで、ボールを見ない生活をしてほしい」と笑顔で選手に伝えた。J1席巻を狙う来季へ-。年の瀬までファンに夢を与えた仙台イレブンが、09年の戦いに幕を下ろした。【木下淳】