11日に開幕する東北社会人リーグ1部で初優勝を目指す福島ユナイテッドFCが5日、J1仙台(サテライト)と仙台・泉サッカー場で練習試合を行い1-1で引き分けた。中国1部の岡山を最短の2年でJFL、J2に昇格させた手塚聡監督(51)が今季就任。悲願のJFL昇格に向けて、上々の仕上がりで開幕戦(対塩釜FCヴィーゼ、宮城県サッカー場)を迎える。

 最後まで足を止めなかった。前半8分に先制を許したが、雨中の一戦で愚直にベガルタ戦士を追い回し、カウンターに徹した。実を結んだのは同32分、奪ったボールを右サイドに展開し元神戸のFW村瀬和隆(24)が頭で決めた。追いついた後は耐える時間が続いたが、体を投げ出して阻止。カテゴリーが3つ上の仙台からドローをもぎ取った。

 昨季はグルージャ盛岡に得失点「1」差で2位。JFL昇格を争う地域リーグ決勝大会に進めなかった。壁を破るべく“昇格請負人”を迎えた。岡山を08年にJ2に昇格させた手塚監督を招き、昨季から退団16人、加入14人と戦力を一新。就任後は「1得点、1失点にこだわれば昨季は涙を流さず済んだ」と説き続けた。新指揮官の教えが、開幕前最後の実戦調整となった仙台戦に表れていた。

 年間予算は約4000万円。登録29選手のうちプロ契約は4選手。その1人で元仙台のFW小林康剛(29)も「昇格のためなら」と、少年サッカースクールの講師として運営費確保を手助けする。練習着も少なく「サイズで背番号が決まる」と指揮官は笑う。監督の年俸も岡山時代より下がったが「昇格を目指す楽しみの方が大きい」。川崎市に家族を残して単身で福島に移り、サッカーに情熱を傾けている。

 25選手が仕事を掛け持つため、キャンプも2部練習もできない。手塚監督は1月26日の始動後、週末に練習試合の連戦(45分×3本×2日間など)を組んで鍛えた。地域リーグ決勝大会は最高で3連戦。「疲れたなんて言い訳なし」と指揮官。DF金基洙主将(27)も「走り負けない意識が強くなった」と自信を持つ。

 仙台の手倉森監督も「手塚さんのコーチングも的確でしたし、スピード感、まとまりがあるチーム。昇格するんじゃない?」と太鼓判。手塚監督がクラブ悲願のJFLへ、その手で引き上げる。【木下淳】