移籍やむなし。甲府の日本代表FWハーフナー・マイク(24)が、代表での活躍で今オフの移籍に拍車がかかった。今季限りで契約が切れるエースFWは、前日の2得点の大活躍で、国内、海外各クラブから注目される存在になった。J1残留へ、甲府のチーム全体が気持ちをひとつにしているが、地方の小クラブである甲府からすれば、仮にハーフナーが移籍した際に発生する移籍金は大きな魅力でもある。

 ハーフナーが2得点を決めたタジキスタン戦から一夜明けた12日、J1とJ2合同実行委員会に出席していた甲府の海野社長はエースの活躍を振り返った。「報道陣の前で『甲府に還元する』って話してたけど、ありがたかったね」。浮かれることはなかった。残留争いという状況と、評価が急上昇中の大黒柱の去就がチームの今後を占うからだ。

 関係者によれば、ハーフナーの市場価値はおよそ5000万円。今季推定年俸1000万円から5倍の評価で世界中から注目を集める。今夏にはロシアのルビン・カザンから正式オファーが、イングランドのアストンビラからは練習参加の打診が届いている。さらに、10月末から11月初旬にかけオランダ、ドイツなどのクラブ関係者が来日し、視察予定もあるという。

 クラブには痛しかゆしだ。今季予算は推定15億円。黒字決算をモットーにしている同社長は「引き留めに最大限の努力はする」と宣言したが、契約が切れる今オフには争奪戦で札束攻勢に出るクラブが出てもおかしくない。同社長は「大企業がバックについているチーム、ましてや欧州のチームとマネーゲームとなったら太刀打ち出来ない」と渋い表情。高額な移籍金は魅力でもあるが、移籍金なしの移籍もありうる状況だ。

 ハーフナーはこの日、友人とともに車で大阪から地元に戻った。今日13日に練習再開予定だがJ1残留が大前提。今季は14得点で得点ランキング2位。甲府出身の女性と結婚し、8月には長女も生まれた。甲府への愛着もあるが、将来的には海外挑戦を視野に入れている。「(海外挑戦は)甲府で結果を残してから」。開幕前に口にしていた言葉が、ここにきて現実味を帯びてきた。【加納慎也】

 ◆ハーフナー・マイク

 1987年(昭62)5月20日、広島県生まれ。横浜ユースから06年横浜トップチーム昇格。福岡、鳥栖への期限付き移籍を経て10年から甲府へ。11年9月2日W杯アジア3次予選北朝鮮戦でA代表デビュー。10月11日同予選タジキスタン戦でA代表初得点。194センチ、86キロ。