激戦区2列目に殴り込む。札幌は26日、大分スポーツ公園でJ2大分とサブ組中心の練習試合を行い1-2で敗れた。前半19分には左MFで先発した2年目FW三上陽輔(19)が、右足で先制点を挙げた。昨季序盤は主力1トップで出場も2得点止まり。終盤はベンチ入りすらできないスランプを味わった。今季は主力組でのプレーはまだないが、残り2週間でアピールし、開幕メンバー入りを狙う。

 三上が鮮やかな今季1号を決めた。前半19分、MF荒野のパスを受けるとDF3人をかわし右足を振り抜いた。「得意な形。最初の2人を抜けたのでシュートまでいけると確信した」。ボールは鋭いカーブを描きゴール右隅に刺さった。

 今季チームは実戦5試合で、得点は三上のゴールを含めわずか3点。サイドハーフは近藤、古田、砂川、岡本と選手層が厚く厳しいが、ここから結果を出し続ければ、主力に絡むチャンスはある。前日25日の福岡戦は主力組が無得点。フィニッシュ精度に課題が残っただけに石崎監督も「三上の得点は持ちすぎだが、いい形」と振り返った。

 プロ初年度の昨季序盤は腰痛で離脱したエース内村不在の間、1トップとしてチームを支えた。震災中断明けの4月23日湘南戦から6試合連続で先発出場。5月15日の鳥取戦では2得点してリズムをつかみかけたが、ゴールが続かなかった。「いろいろ考え過ぎるようになった」。ボールを受けてからの判断が遅れる。考えるほどスランプに陥り、8月21日の京都戦を最後に出場機会なし。終盤9戦はベンチ入りもなく、シーズンを終えた。

 このまま沈んでいるわけにはいかないと、熊本合宿では、ある本をバックにしのばせた。日本代表MF長谷部、DF長友も愛読する「ニーチェの言葉」だった。「どの言葉がいいというより時間があるときに読んで気持ちを切り替えている。自由に思いきってやろうという気持ちになった」。19世紀のドイツ哲学者の教えが精神面の糧となった。

 開幕まで2週間をきった。当然目指すは、初の開幕先発だ。「とにかくJ1で出てみたい。出てなんぼ」。一昨年、高3でデビューしさわやか学ラン旋風を起こした男は今年、20歳になる。合宿中にヒゲを伸ばし続け、野人のような風貌になった。節目の年。ワイルド感たっぷりのヒゲ魔神として再爆発を目指す。【永野高輔】

 ◆札幌の開幕先発予想

 現時点で濃厚なのは河合のボランチと4バックのうち、岩沼、高木純と奈良の3人。攻撃陣は流動的な部分が多く、昨季チーム得点王の内村のトップ下以外は今後のアピール次第。サイドMFは主力でプレーしている砂川、近藤、岡本、古田だけでなく、ボランチ候補の山本、FW前田もできるポジションとあり、競争が激しい。1トップは前田が1歩リードも大島、キリノ、横野や復活を目指す44歳中山もいる。