名将たちのスタイルを融合させた“アーニー流”で勝つ。仙台のグラハム・アーノルド監督(50)が14日、仙台市内で就任会見を行った。手倉森誠前監督(46)と、06年にオーストラリア代表コーチとして支えたヒディンク監督(67)が重要視した選手とのコミュニケーションが「成功のキーだ」と力説した。

 前監督も“愛用”したベガルタゴールドのネクタイが、新指揮官の胸の内を表していた。会見の冒頭では、流ちょうな日本語で「はじめまして。アーノルドです」とあいさつ。昨年11月に対面した手倉森前監督を「マコトサン」と呼び、「敬意を表して、残してくれた財産を受け継いでいきたい」と決意を新たにした。

 強調したのは「チーム」「ファミリー」という言葉だった。研究熱心な新指揮官は「選手のプレーのDVDは、かなりの量を見た」という。数ある試合の中で強烈なインパクトを与えたのは「仙台のために戦う姿勢」だった。11日の来日後にはコーチングスタッフと対面し「ファミリー感があって、親しみやすい」と笑顔を見せた。ピッチ上で「11人の個人が1つのチームを打破することはできない」という信念を貫くための環境は整っている。

 名将の教えと仙台のチームカラーも一致した。06年にヒディンク監督をコーチとして支え、母国のW杯初出場に貢献。「彼はコミュニケーションが成功のキーだ、と言ってきた。(手倉森監督と同様に)選手と近い関係を築いていきたい」。個性をいち早く理解するためにも、18日の始動を心待ちにしている。

 サッカーを語る真剣な顔つきが変わったのは、サポーターからの呼び名を問われた時だった。「アーニーと呼んでください」。厳しさの中に優しさも持ち合わせる新指揮官が、仙台で大仕事を成し遂げる予感がする。【鹿野雄太】

 ◆グラハム・アーノルド

 1963年8月3日生まれ、オーストラリア・シドニー出身。80年からFWとして活躍し、85年にオーストラリア代表に選出。オランダやベルギーでもプレーした。97、98年は広島に在籍。01年に現役引退。07年に母国のA代表監督を務めるなど、世代別代表の指導経験も豊富。昨季までオーストラリア1部セントラルコーストを指揮した。183センチ。