EU各国は、トルコの海岸にシリア難民の3歳の男児が遺体となって打ち上げられた悲劇的な写真の報道によって、ようやく中東やアフリカからの難民の受け入れに本腰を入れ始めたようだ。

 だが、いち早く難民支援のために手を挙げたのは、Bミュンヘンをはじめとするサッカーの欧州ビッグクラブだ。

 英ミラー紙(電子版)などが報じたところによると、Bミュンヘンは支援プロジェクトへの100万ユーロ(約1億3500万円)の寄付や、宿泊施設の提供を表明した。

 次節12日のアウクスブルク戦では、選手たち1人ひとりが、ドイツ人の子供と難民の子供を両手に連れて入場するセレモニーを行うという。

 クラブのチェアマンであるカールハインツ・ルンメニゲ氏(59)は「バイエルンは、難民たちを支援し、彼らに寄り添うのは我々の社会の責任だと考えている」と話している。

 かつて中村俊輔(37=横浜)がプレーしたスコットランド1部セルティックも、この動きに同調。元スコットランド代表監督で、セルティックでも指揮を執ったジョック・ステイン氏の没後30年記念イベントが今週末に開催されるが、その収益を支援活動へ寄付すると発表した。

 日本代表MF香川真司(26)が所属するドルトムントは、8月27日にホームのシグナル・イドゥナ・パークで行われた欧州リーグ・オッド(ノルウェー)戦に、難民220人を招待。

 スタンドではドルトムントサポーターが「refugees welcome(難民のみなさん歓迎します)」という横断幕をかかげて迎え入れた。クラブの公式ツイッターにはこの時の写真が公開されているが、難民たちが生き生きとした表情で観戦する姿を見ることができる。

 ブンデスリーガでは「refugees welcome」が合言葉のようになり、各スタジアムで、その横断幕が見られるという。

 もちろん抜本的な解決には国家の力が必要だと思う。だがスポーツが、こういった問題に対してできることは多いと思う。

 母国で辛い日々を過ごしていた人々が一瞬でもその苦しさを忘れ、香川のプレーに目を輝かせていたなんて、同じ日本人として本当に誇りに思う。

 願わくば、日本でもこの難民問題に対して、何かアクションを起こしていければ。これは対岸の火事などではないのだ。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)