米国と北朝鮮の間で政治的な緊張が高まる中、英インディペンデント電子版は両国に関係のある、英国人サッカー関係者のインタビューを掲載した。

 「もし彼(金正恩)が台湾を標的にしだしたら、僕をつけているってことだよ」。そう話すのは、今年からサッカー台湾代表チームの監督を務めるゲーリー・ホワイト氏(43)。

 英サウサンプトン出身の同氏は、12年2月~16年5月までグアム代表を率い、北朝鮮と対戦した経験も持つ。

 グアムはこれまで北朝鮮のミサイルの標的となってきたが、ホワイト氏は「グアム島民は(そういう状況に)もう慣れっこになってしまっている」という。「グアムがターゲットにされるのは、別に新しいことじゃない。僕は4年間グアムにいたけど、3週間おきにミサイルの標的にされているような感じだったからね」。

 金正恩氏から名指しされた直後に、東アジア杯で北朝鮮と対戦したこともあったと振り返るホワイト氏。「彼らとやる時はいつも、さまざまな要因によって張り詰めた試合になる。でもグアムは自ら頼んで政治的な緊張状況に巻き込まれているわけじゃない」。サッカーそのものは真剣勝負のフェアプレーが繰り広げられるだけに、外部からの影響について懸念していた。

 その上で同氏は「グアムの人々はとても機知に富んでいて、どんな状況でもお互いを助け合う、ファミリー精神の宿る国なんだ。だからみんなもっとグアムを訪れるべきだし、最近の状況のせいで人々の足が遠のくことのないようにしてほしい」と希望した。

 一方、インディペンデント電子版は、北朝鮮国内への観光ツアーを運営する旅行会社の英国人関係者2人にもインタビュー。彼らによれば、金正恩氏の強硬な姿勢にもかかわらず、少なくともサッカー界においては北朝鮮側にも変化は見られるという。

 今夏、AFC杯に北朝鮮のクラブが2チーム出場。アジアのカップ戦に同国のチームが出るのは26年ぶりだった。そのうち朝鮮人民軍のクラブである「4・25体育団」は4強に進出した。

 サッカー界にも、もちろん人々の普段の生活にも、ミサイルの影響などあるべきではない。子供のけんかのようなののしり合いを繰り返す国のトップを尻目に、普通に交流ができるサッカー界の人々の方が、よほど理知的だと思えるのは筆者だけだろうか。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)