サウサンプトンの24節は、昨年12月の前回対決で5失点大敗に終わったトットナム戦。ホームでのリターンマッチでは、引き分けで1ポイントを獲得した。日本代表DF吉田麻也(29)はハムストリングスの負傷で今節も欠場した。

 サウサンプトンは相手CBのオウンゴールではあったが、先制にも成功。15分、左SBバートランドが弾道の低いクロスを入れると、ボールはスライディングでクリアを試みたD・サンチェスの足を経て、ニアポスト内側に転がり込んだ。しかし、トップ4を争う格上のトットナムは、わずか3分後に主砲ケインがCKに頭で合わせて試合を振り出しに戻した。その後は、互いにチャンスを手にしながらも2点目は生まれないまま、終了のホイッスルが鳴った。

 18位でキックオフを迎えたサウサンプトンは、降格圏を抜け出すことはできなかった。勝ち星のないリーグ戦は、これで11試合連続に伸びてもいる。だが試合後、指揮官のマヌエル・ペジェグリーノが、監督の座を「長く座っていることは難しい電気椅子のようなもの」とする冗談で受け流し、「チームスピリットと勝利意欲は非常に良かった」と前向きだったように、スランプ脱出に希望の持てる内容ではあった。

 立ち上がりから積極性を見せ、前半1分足らずでガッビアディーニがミドルで相手ゴールを脅かした。そのイタリア人1トップを先頭に、前線からのプレッシングにも果敢に取り組んでいた。ポゼッションこそ6割強をトットナムに譲ったが、絶好機の数はほぼ互角。ハーフタイム前には、相手MFシッソコが至近距離で合わせたシュートを枠外に飛ばした7分後、CBスティーブンスのヘディングがバーの上を超えた。フルタイム間際には、対角線上に狙ったケインの左足シュートが枠外にそれた3分前、後半にベンチを出た17歳のFWオバフェミの右足シュートがファーポスト外側へと転がっていった。10位から18位までは、4ポイント差の中に9チームが並ぶ団子状態。ペジェグリーノ監督が、試合前後の会見で繰り返したように、「ひと月もあれば状況は変えられる」と思わせる強豪相手の引分けだった。

 その様子をスタンドで見守った吉田も、27日に行われるFAカップ第4回戦でのワトフォード戦に向けて、ムードも上向いているはずのチームに復帰する意欲を増したことだろう。ペジェグリーノ監督が「(今節前の)金曜と土曜も練習はこなしていた」と説明した日本代表CBは、大事をとっての欠場。指揮官は、復帰を急いて守備のリーダー格をすぐにまた失うような事態だけは避けたかったに違いない。相手のセットプレー時、メインのターゲットであるはずのケインに対し、スティーブンスが簡単に逃げられ、ガッビアディーニも落下地点で競り損ねた前半18分の失点は、守備の意識が徹底されていれば防げない失点ではなかった。その前後、クロスが放り込まれると乱れ気味だった守備組織にも改善が見られるだろう。

 試合後には吉田自身も、「大丈夫です。水曜日から(スカッドの一員に)復帰します。ご心配おかけしました。練習中に(サッカー)人生で初めてハムストリングを痛めてちょっとショックでしたが、もう立ち直りました。肉体的にも精神的にも。今日、(チームは)勝ち点1をとれたし、(自分も)また来週からしっかり競争してきます!」と、戦線離脱終了に明るい表情を見せていた。

 中位への再浮上と、スタメンへの復帰に向けて、サウサンプトンと吉田のリスタートが始まる。(山中忍通信員)