<スコットランドリーグ杯:セルティック3-1キルマーノック>◇29日(日本時間30日)◇準々決勝◇キルマーノック

 【キルマーノック(英国)=アンソニー・マッカスカー通信員】セルティックMF中村俊輔(30)が、キルマーノック戦で「怒りの1発」を決めた。前半から何度も激しいタックルに倒され、股間(こかん)を蹴られた中村は、同40分に主審に珍しく抗議。逆にイエローカードを食らうと、その直後、直接FKから鮮やかなゴールを奪った。打撲を負って前半だけで交代したが、大黒柱の1発が起爆剤となり、チームは準決勝へ進出した。

 怒りが、中村を奮い立たせた。1-0リードの前半終了間際、FWマローニーが倒されて得たFK。ゴールまで約21メートルの距離から4枚の壁をあっさり破った。相手GKの必死のセーブも及ばず、ファーポスト際へボールは突き刺さった。リーグ優勝のかかった昨年4月22日、同じキルマーノック戦で試合終了間際に、FKで劇的な決勝ゴールを奪った。それを思い起こさせる場所で、今回は全く別の感情に突き動かされた。

 前半から何度も悪質な激しいタックルに遭った。前半39分、左足の股間を蹴られた。普段は冷静な中村が、ぶち切れた。警告を出さないトムソン主審に対し、指を4本立てて「4回目だ!」と声を荒らげると、逆にイエローカードを突きつけられた。「選手を守るための審判なのに守ってくれない」。怒りが6分後のゴールにつながった。どうだ、と言わんばかりにガッツポーズする中村。チームを鼓舞する上でも、最高の起爆剤だった。

 ストラカン監督も憤った。「ナカがイエローなんておかしい。主審に何回もタックルされたと教えただけだ。思わず固まってしまったよ」。敵地「ラグビーパーク」で、まさにラグビーさながらのラフタックルのオンパレード。それにひるむことなく、怒りの感情を「ゴール」に変えた。その勇敢な姿勢が、チームを4強へ導く力となった。

 前半だけで交代した中村は、「左足のまたの上あたりに相手の足が入った。力が入らなくなって交代させてもらった」と明かした。打撲の程度は定かでないが、11月2日ハーツ戦への出場は微妙な状況となった。それでも「カップ戦はアウェーでてこずるけど、得点して勝利に貢献できてよかった」。試合で闘志をむき出しにした中村だったが、ピッチを離れれば、いつもの穏やかな顔に戻っていた。