【バルセロナ(スペイン)29日=塩畑大輔、山本孔一通信員】エスパニョールMF中村俊輔(31)が30日(日本時間31日午前0時)、スペインリーグ開幕戦のビルバオ戦に臨む。前日の練習では、ハーフコートの紅白戦で主力組の右MFでプレーし、先発は確定的になった。その後の居残り練習では、得意のFKの感触をつかみきれず「深刻かも」と、珍しく弱気な言葉を残したが、「広い視野で、スペインリーグを楽しむことができれば」と、新たな挑戦へ前を向いた。

 まさかのスランプ?

 晴天に恵まれたエスパニョールの練習場で、居残り練習でFKを蹴っていた中村の表情が、徐々に曇っていった。6本蹴って1本はゴールに入ったが、納得した様子はなし。他のキッカー候補が引き揚げた後もピッチに残り、さらに7本のFKを蹴った。それでも十分な手ごたえが得られず。「(感触が)悪い?」と聞かれ「うーん、深刻かも」とつぶやいて、練習を終えた。

 練習後、クラブハウスから引き揚げる際、中村は「今までのボールと感触が違う。芯の場所が違うというか」と、“違和感”の正体を説明した。スペインリーグ公式球は、縫い目が多いスコットランドリーグ公式球と違い、表面がつるりとしていて、思うような空気抵抗が得られないという。

 加えて、まだ完全には慣れていないスペインの芝は「踏みしめた時の感触も違う」と言い、軸となる右足が不安定になりがち。そのため、中村得意の左足でこすり上げるFKの威力はやや落ちる。対策として、ストレート系のFKを磨いているが「練習がハードだった分、居残りで蹴り込めなかった」と、納得できる完成度で開幕戦を迎えることはできなかった。

 それでも中村は前向きだ。念願のスペインリーグデビューに「相手は強いし、うまくいくこともあれば、うまくいかないこともある。それを乗り越えていくことで、大きく成長できると思う。それを楽しむために、スペインに来た」と胸を躍らせた。

 紅白戦では主力組右MFでプレーし、開幕先発も確定的だ。「レジーナの時は若かったし、結果にこだわることで精いっぱいになっていた。若いうちにスペインに来られたとしても、同じようになっていたかも。今回は広い視野で、スペインリーグを楽しむことができれば」と中村。FKが本調子ではなくても動じない。あこがれのスペインリーグを十分に味わいつくす。

 [2009年8月30日9時32分

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