【ミラノ(イタリア)19日=八反誠、波平千種通信員】日本代表MF本田圭佑(27)が所属する名門ACミランに元オランダ代表のクラレンス・セードルフ新監督(37)が就任した。15日にブラジルからミラノ入り。16日に就任し早速指導を始めた。一体どんな監督なの??
いてもたってもいられず、同監督がミラノ市内で共同経営する和食レストラン「FINGER’S(フィンガーズ)」に“潜入”した。
ミランのセードルフ新監督が和食レストランを共同経営している-。ここミラノでは有名な話のようだ。ミランで現役だった03年トヨタ杯や07年トヨタ・クラブW杯で来日しているが、日本で暮らした経験はないはず。1号店は今年で創業10年の人気店。昨年12月にユネスコの無形文化遺産に登録されたばかりの「和食」に10年以上も前から注目していたなんて!!
即席のミラン番記者?
として行かない手はない。練習場ミラネッロ、本拠地サンシーロに続く“潜入”第3弾。敏腕の波平通信員とディナーに出掛けた。
いかにも欧州という重みある外観。日本なら、セレブや落ち着いた大人がデートで使うような店構えと雰囲気に気後れするが、意を決して入店。すしカウンターがありハチマキをした板前さんがいる。活気十分だ。後方の壁には出会いの「逢」という大きな書が飾ってある。新監督は「出会い」を大切にしているようだ。就任と加入がほぼ同タイミングの本田とは運命の出会いだといいのだが…。
案内された席は座面が畳で掘りごたつ式で快適。通常のテーブル席もある。早速「セードルフさんの好物をお願いします」と注文。勧められたのは「ブラジルの思い出」といった創作すし。サーモンのタルタルといくら、アボカドを使った押しずし。甘みのあるタレがきいて、おいしい。
日替わりの前菜2種は、ギョーザと衣が少し変わったエビフライ。刺し身の盛り合わせを2人で取り分け大満足。最後に、あえてみそ汁を注文。こういったシンプルな1品に大きな差が出るはず。厳しく食したが、合格!
何の違和感もなく、おいしい。
小さな声で「星3つ~」と言ってみると、隣のイタリア人美女2人に笑われたが気にしない。会計を済ますと店員さんがそっと教えてくれた。「今は監督になったばかりで忙しいようですが、火曜か水曜の夜遅くか日曜ならセードルフもこの店に来ますよ」。
結論は日本に出店しても人気が出そう。日本食への理解は上々。日本のエース本田ともうまくやっていけるだろう-。多少強引だがこういう理論が完成した。「セードルフ+日本」のキーワードは、ここミランでブレークの実績アリ。ミラン本田の未来も明るい??
心配は本田が従来の日本人の枠を打ち破るタイプだという点か…。本田は私生活がベールにつつまれ普段どこで何を食べているかも分からないが、とにかく、楽しみながらミランの新旧10番タッグを見てみたい。
◆FINGER’S(フィンガーズ)
セードルフ氏と日系ブラジル人のロベルト・オカベ氏が共同経営する和食レストラン。にぎりずしや創作和食を提供する。ミラノ市内に2店舗ありミラノ店は市内南東部、ガーデン店は北東部にある。比較的中心部から近い。同国西部サルデーニャ島にもう1店舗構えている。高級店で多少値が張り、ミラノ店では「刺し身盛り合わせ」が24ユーロ(約3400円)「みそ汁」が6ユーロ(約840円)。
◆本田と監督
本田は監督に比較的恵まれてきた。名古屋時代はネルシーニョ監督(現柏監督)に見いだされ、プロ入り。続くフェルフォーセン監督(元PSV監督)の縁もあり、オランダVVVに移籍。ここではファンダイク監督に攻撃の全権を任された。CSKAではスルツキー監督とボランチ起用を巡って衝突もしたが、最終的に力を認めさせ不動の存在に。日本代表ではオシム監督に初招集され、W杯南アフリカ大会前に岡田監督に抜てきされ、ザッケローニ体制下で現在の揺るぎない地位を築いた。星稜高の河崎監督との出会いも大きかった。<クラレンス・セードルフ
アラカルト>
◆生まれ
1976年4月1日、スリナム共和国生まれ。ミランの4月1日生まれの監督はサッキ、ザッケローニ(現日本代表監督)に続き3人目。
◆サッカー歴
92年にオランダの名門アヤックスでプロデビュー。サンプドリア-Rマドリード-インテルミラノ-ACミラン-ブラジルのボタフォゴでプレーした。オランダ代表としても国際Aマッチ87試合に出場した
◆語学堪能
6カ国語を操る。オランダ、英、イタリア、スペイン、ポルトガル、スリナム語。
◆インテリ
09年には米ニューヨーク・タイムズで質問に答えるコラムを執筆していた。
◆愛称
ミラン時代は「教授」「ミラネッロのオバマ」と呼ばれていた。
◆タイトル
異なる3クラブで計4度の欧州CLを制覇した世界でただ1人の選手。クラブではこの欧州CL優勝やトヨタ・クラブW杯、トヨタ杯など計20ものタイトルを獲得している。
◆まるで歌手
かなり歌がうまく、周囲をうっとりさせる歌声自慢。これはセードルフを招聘(しょうへい)したミランのベルルスコーニ名誉会長(元イタリア首相)と同じだとか。