【6月後半の陸上競技展望・国内編】

 シーズン前半のヤマ場だった日本選手権(6月8~10日)は終了したが、ピークを持ってきた選手がその調子で記録を狙いやすい布勢スプリントが行われる。男女の100メートルと男子110メートル障害、女子100メートル障害の4種目に日本のトップ選手が出場する。

 会場のコカ・コーラウエストスポーツパーク陸上競技場は風の強弱を調整できるゲートもあり、直線種目の記録が出やすい競技場。09年には女子100メートルで福島千里(23=北海道ハイテクAC)が11秒24の日本新(当時)をマークした。男子では朝原宣治が04年に10秒09を出している。

 福島の出場は未定だが、男子の江里口匡史(23=大阪ガス)が期待できる。日本選手権では史上2人目となる同大会4連覇を達成。タイムは10秒29と伸びなかったが、勝負を意識しすぎたのが原因だった。五輪代表には決定した。今大会は、プレッシャーなく走ることができる。コーチの朝原さんが持つ競技場記録も更新可能だろう。

 日本学生個人選手権は総合得点を競うインカレと違い、個人のチャンピオンのみを決める。対校戦ではないため記録に挑戦しやすい大会だ。先の日本選手権でロンドン五輪代表を決めた3人が出場する。

 男子400メートル障害には中村明彦(中京大4年)と舘野哲也(中大3年)がエントリー。ともに日本選手権で自己記録を更新して五輪代表を決めた。48秒台は難しいかもしれないが、日本選手権と同じ49秒台前半で走るタフさがあれば、ロンドン五輪での予選突破も可能性が出てくる。

 男子棒高跳びには山本聖途(中京大3年)が出場。日本記録保持者の沢野大地(31=富士通)を日本選手権で破って代表入りした。5メートル60の自己記録更新が目標か。

 また、男子400メートル出場の東佳弘(関大3年)は現時点では代表ではないが、7月に4×400メートルリレーの五輪出場が決まればそのメンバーとなる。日本選手権で46秒26の自己新で走り予想を上回る3位に食い込んだ。今大会でも46秒台前半を出し、日本選手権がフロックでなかったことを示したい。

 全日本大学駅伝関東学連選考会は1万メートルレースを4組行い、各組に1大学2名が出場してその合計タイムで争う。昨年の全日本大学駅伝上位6校の駒大、東洋大、早大、日大、中大、上武大と、箱根駅伝3位の明大はすでに出場権を保持。今大会で決まるのは5校だが、各大学のレベルが拮抗(きっこう)して狭き門となっている。

 1万メートル平均タイムでは日体大、順大、東海大がトップ3だが、東海大はエースの村沢明伸(4年)をエントリーしなかった。それに対して平均タイム8位の青学大は、箱根駅伝2区区間賞の出岐雄大(4年)がタイムを稼いでくるだろう。

 五輪代表入りを逃した村澤だが、4月から連戦が続いたため疲れを考慮した。一方の出岐は3月のびわ湖マラソンで2時間10分台と好走したが、その後は故障でレースから遠ざかっている。両エースの欠場と出場が、どんな結果となって表れるか。

 山梨学大、帝京大、法大、中央学大、専大、東農大らがボーダーラインに殺到しそうだ。【6月後半の主な陸上競技大会】6月22~24日、日本学生個人選手権(平塚)6月24日、布勢スプリント(鳥取)6月30日、全日本大学駅伝関東学連選考会(東京・国立競技場)