<アジア大会:陸上>◇女子200メートル決勝◇25日◇中国・広州

 なでしこ旋風が巻き起こった。陸上女子200メートルで福島千里(22=北海道ハイテクAC)が23秒62で金メダルを獲得し、日本女子初となる100メートルとの短距離2冠を達成した。得意のロケットスタートで序盤から突き放し、終盤の追い上げをかわして快勝した。今日26日の400メートルリレーで3冠に挑む。

 福島は感情を高ぶらせることなく、ゴール後の疾走を緩めた。日の丸を背に、少し笑顔もこぼれたが、冷静だった。「ほっとした。うれしいです」。100、200メートルの2冠は日本人初と聞かされても「実感がない。目標は金メダルを取ることだった」と特別な感慨は起きなかった。

 アジアレベルではもう別格だ。スタートから飛び出し、コーナーを回りきると、誰の目から見ても独走状態に入った。最後の約30メートルで失速、追い上げられたが、危なげなかった。左足首痛の影響で23秒62とタイムは平凡だったが、優勝という使命は果たした。

 期待を背に走ってきた。2年前から日本新を連発。今季も100、200メートルともに初戦で記録を塗り替えた。どこまで伸ばせるか-。周囲の視線を敏感に感じた。「自分でも自分に期待しすぎちゃう。でも周りの期待に応えたいし、ファンは大事にしたい」。

 6月の日本選手権で100メートルは優勝したが、記録は樹立できず。試合後は涙し、夜もほとんど寝られなかった。目の下のクマを見た所属先の中村宏之監督から200メートルの欠場を勧められたが、頑として首を縦に振らなかった。「やめられない。私を見てくれる人がいるから」。

 外国勢を含めても史上3人目の2冠達成の快挙を仲間に感謝した。「私が200メートルで金メダルを取れるように、(23日の)400メートルリレーの予選を代わってくれた」と気遣った。「みんなで一緒に取る金メダルはひと味もふた味も違うと思う」。当初から宣言していた3冠でアジア大会を締めくくる。【広重竜太郎】