<奥むさし駅伝>◇29日◇埼玉・飯能市

 走ってマラソン大会を作りたい!

 ロンドン五輪男子マラソン代表最有力候補の川内優輝(24=埼玉県庁)が29日、埼玉県飯能市で開催された第10回奥むさし駅伝に「埼玉県庁」チームで参加し、最終6区(9・283キロ)を27分15秒の区間賞で走りきった。地元での大声援に、快走後には「埼玉マラソン」創設を目標に掲げ、県職員として尽力することを約束。機運を高めるためにも、五輪での活躍を誓った。

 川内の頭の中はマラソンのことでいっぱいだった。いつものようにゴール後に倒れることなく話しだすと、まつげからも滴る汗のように言葉も止まらない。

 川内

 今日は茨城で勝田マラソンが行われていますし、東京都には東京マラソンがあります。神奈川は女子ですね、横浜国際女子マラソン。山梨にも河口湖マラソンがあります!

 

 レース中に暗唱し続けたのではないかと思うくらい、次々に関東地方のフルマラソン大会名が出てくる。さすが「市民ランナーの星」。そして言いたかったのは、「埼玉には本格的なマラソン大会がないので、ぜひ作りたい!」。県民のファンから「おーー」の歓声を浴びて、照れ笑いした。

 埼玉県庁に就職したときからの夢だった。昨年12月の県議会で上田知事が前向きな姿勢を示すと、一気に構想がふくらんだ。「県で行っているB級グルメ選手権とコラボしたら」「好記録を狙えるレースにするならコースは川越から大宮。新都心も走れるしアップダウンもない」。まだ県として検討を始めた段階だが、かなりの“ロケットスタート”で私案を練っていた。しまいには「推進室に呼んでもらいたい」。まだない部署名まで飛び出した。

 走りはこの日も快調だった。県庁仲間と参戦。繰り上げスタートになると、こちらでもロケットスタート。関係者が「1人だけ100メートルを走っているようだった」と舌を巻く超特急発進で、前を抜きに抜く。「前半から突っ込んで、後半どこまで粘れるかでした」と84位から66位に上げて、区間賞も獲得。沿道からの「頑張れ!」の大声援に、「埼玉県でマラソンを」の思いをより強くした。

 「第1回大会は裏方として忙しかったら(走るのは)しょうがないですね」と想像はふくらむばかり。今後は来月5日の丸亀ハーフマラソンから同26日の東京マラソンに参戦し、ロンドンをとらえる。県職員の自分の好走こそ、マラソン大会創設に向けた最高の後押し。使命感も持って足を動かす。【阿部健吾】