<びわ湖毎日マラソン>◇4日◇滋賀・大津市皇子山陸上競技場発着(42・195キロ)

 「伏兵」が五輪切符を確実にした。一般参加の山本亮(27=佐川急便)が競技場内で中本健太郎(29=安川電機)を逆転し、日本勢最高の4位に入った。雨の中、堀端宏行(25=旭化成)や中本ら世界選手権代表組をかわし、2時間8分44秒の好タイム。今夏結婚を予定する男が、婚約者に誓った「ロンドン行き」を実現させた。中本も2時間8分台で代表の可能性を残した。

 一般参加の白ゼッケン「120」が、グイグイと追い上げた。山本は35キロ地点で18秒差あった堀端を39キロで抜くと、競技場内でラストスパート。残り400メートルで中本をかわし、最後はサングラスを外した。「せっかくなので顔を見てもらおうと思って」。雨、低気温の悪条件ながら2時間8分台でゴール。両手を挙げてテープを切り、力強く右手を振り下ろした。

 山本

 最後はオリンピック!

 オリンピック!

 と念じながら、何とか(中本に)届いてくれと思って走ってました。気持ちだけは引かないように。伏兵ですよね。

 中大では箱根駅伝で健脚をふるい、佐川急便の主将として駅伝で活躍する。自慢のスピードに加え、昨年12月以降は「丈夫だけが取りえ」と毎月1200キロ走り込んだ。スタミナも備えて「後半は誰よりも強いんだと言い聞かせていた」。4度目のフルマラソンとなった大舞台で、自己ベストを3分以上も更新した。

 「一緒にロンドンに行こう」。昨年末、2年近く交際する田坂麻希さん(27)にプロポーズした。今は来年3月の挙式、今夏の結婚へ向けて新居を探している。愛を込めた口説き文句がまさかの?

 現実になりそうだ。ラブラブの新婚生活スタートの時期が、ロンドン五輪と重なる。沿道やスタンドで声援を送った麻希さんは「結婚はずれる可能性がありますね。うれしい誤算ですけど」と笑った。

 兵庫屈指の県立進学校、長田高の出身。「得意は現代文」で、中大法学部では中学社会などの教員免許を取得した。練習拠点にする滋賀で、会社のシンボル「飛脚」のように見せた快走。「僕らは中堅と言われる世代。同級生とマラソンを盛り上げようと言ってたんです。好きな言葉は因果応報。やればやっただけ結果は返ってくるから」。高偏差値ランナーが、愛する人と同僚にロンドン切符を届けた。【近間康隆】

 ◆山本亮(やまもと・りょう)

 1984年(昭59)5月18日、神戸市生まれ。西神中から陸上競技を始め、全中では1500メートル9位、3000メートルで5位。長田高2年から1500メートルで総体に出場するが、2年連続で予選落ち。中大では法学部。箱根駅伝は1年で8区11位、2年で8区15位、4年時は5区3位。初マラソンは09年北海道で、2時間12分10秒はこれまでの自己記録。10年東京と昨年の北海道も経験。趣味はNFL観戦で、好きなチームはパッカーズ。好物は鶏の空揚げ。家族は両親と妹。173センチ、60キロ。