<松山英樹専属キャディー:進藤大典>

 最初に言わせてください。ヒロシ、フジサンケイ・クラシックでのツアー初優勝、本当におめでとう! 同級生の岩田寛とは、東北福祉大ゴルフ部以来の親友です。かつては試合でコンビを組み、今もLINEで意見を交換したりと「戦友」ともいうべき仲でもあります。やはり同級生のユウサク(宮里優作)が去年の日本シリーズで優勝して「次はヒロシの番だ」とみんなで期待していました。

 親友の悲願の勝利。本当にうれしいし、これ以上ない刺激にもなりました。僕も負けてはいられません。今週は米ツアーのプレーオフ最終戦、ツアー選手権に出場します。年間のポイントランクの上位30人しか出られない一戦。英樹も第3戦のBMW選手権の終盤まで、出場が微妙な状況でした。ですがまたも土壇場で、無類の勝負強さを発揮してくれました。

 残り2ホールどちらかでバーディーが必要だった、17番パー5。第1打はフェアウエーバンカーに落ちました。残り228ヤード。2オン可能な距離ですが、グリーン手前には池があります。刻んだ方かいいな-。そう思った時、英樹が「ライもいいし。届くし。いっちゃう?」と言いました。

 実はあのホールでは練習ラウンドから、1度も2オンに成功していませんでした。第1日は池に落としています。さらに言えば、12年の全米アマでも、ここで池に落として予選落ちをしました。残り100ヤードに刻めば、チャンスも残ります。でも僕は英樹の問い掛けに「そうだね、いっちゃおうか」と応じていました。

 僕にそう言わせたのは、まず英樹が4番アイアンを手にしていたことです。初めてコンビを組んだ12年のアジアアマでは、4番アイアンで次々とイーグルチャンスにつける様に驚かされました。今年の全米プロ第2日の最終18番パー5、予選通過にはイーグルしかない場面で、ピン奥2メートルに2オンさせたのも4番アイアンでした。4番アイアンが起こす数々の奇跡を、僕は見てきています。「大典さんはオレの4番、ホント好きだよねぇ」と英樹に笑われますが、それほどに信頼の1本なんです。

 そして去年のフジサンケイ・クラシックや、今年6月のメモリアル・トーナメントなど、英樹は追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮して、劇的に勝ってきました。土壇場だからこそ、英樹はやってくれる。これまでの経験が、そう思わせてくれました。

 結果は池をわずか2ヤード超えて、ピン左4メートルに2オン成功。これで最終戦進出はほぼ決まりました。びっくりしたのは、後に優勝したビリー・ホーシェルが「あの17番のショットはすごかったね」と肩をたたいてきたことです。他にも多くの選手、キャディーがあの判断、あのショットをたたえてくれました。

 あの場面、一瞬で「GO」と判断できたのは、短くないコンビ経験があってこそだと思います。しびれる展開だからこそ「専属コンビならではの強み」を再確認できました。(2014年9月11日付紙面掲載)