<男子ゴルフ:コカ・コーラ東海クラシック>◇最終日◇4日◇愛知・三好CC(7310ヤード、パー72)◇賞金総額1億2000万円(優勝2400万円)

 石川遼(18=パナソニック)が、「ドタバタ&ミラクル劇」で混戦を制した。単独首位から出ると、後半に2ダブルボギーをたたいて一時後退も、15番パー5のイーグルなどで巻き返し、最後は18番パー4で劇的バーディーを奪い、決着をつけた。この日は69で通算14アンダーの274、今季4勝目で通算6勝目だ。獲得賞金は2年連続で1億円を突破し、賞金王争いでもリードを広げた。5日には米国-世界選抜対抗戦プレジデンツ杯のために米国へ出発、タイガー・ウッズ(33)との再戦を狙っている。

 石川自身が一番信じられなかった。最終組の3人が通算13アンダーの首位に並んで迎えた18番パー4の第2打。残り188ヤードのラフから、グリーン右に切られたピンの左6ヤードを狙ったストレートボールが、落ち際に右へフェードしていく。「不思議でしたね。なぜ球が曲がるのか…。ピンそばについたのが歓声で分かった時は、鳥肌が立ちましたね」。ゴルフの女神が後押ししたように、球はカップ手前50センチに止まる。劇的バーディーで、ライバル池田、伏兵梶川、昨季賞金王片山まで巻き込んだ混戦に決着をつけた。

 「もうこんなシナリオは誰も書けないですね。プレーしてておかしくなっちゃいます」と自らあきれるほど、山あり谷ありの1日だった。9番終了で2位に2打リードも、10番は右OBでダブルボギー。14番は3パットのダブルボギーで、2打差4位に後退した。

 そこで弱気にならず、発奮するのが石川らしさだ。「むしろアグレッシブな気持ちを奮い立たせてくれるダブルボギーだった。そのおかげで勝てたと思うくらい」。続く15番パー5で圧巻のプレーを見せた。フェアウエーから残り220ヤードの第2打で、4番アイアンを握り「フルショットでぴったり」と確信。「カモン!」という声とともに、球は池を越えてピン前1・5メートルについた。イーグルパットを決めて勢いを取り戻し、18番での劇的ショットを呼び込んだ。

 日本ツアーでは独壇場の石川だが、次週はまた世界舞台に立つ。プレジデンツ杯は出場だけでも名誉なことだが、それ以上に期待しているのはウッズとの対戦だ。98年の同杯で丸山茂樹がウッズを撃破したことを引き合いに出し、「誰との対戦も楽しみだけど、ウッズはその中でも存在感がある。ゴルフは何が起こるかわからない」とニヤリ。日本ツアー賞金ランク1位の看板を引っ提げて、堂々と挑むつもりだ。

 また今大会の優勝で、11月の世界選手権シリーズ・HSBC選手権(中国)の切符も獲得した。同週はスポンサー大会のレクサス選手権だが、「挑戦したい気持ちはある」。こちらもウッズが出場予定で、直接対決の可能性もあり「自分自身へのサプライズプレゼントですね」と興奮を隠さない。賞金王へ前進するだけでなく、世界舞台と世界王者への挑戦権も手に入れる大きな1勝だった。【阿部健吾】