【オーガスタ(米ジョージア州)29日(日本時間30日)=木村有三】石川遼(19=パナソニック)が、今季の獲得賞金全額を東日本大震災の被災者へ寄付することを決めた。震災発生前から米ツアーを転戦していた石川は、日本にいる関係者らと支援活動について模索。まとまった義援金を1度に送るのではなく、今年の“労働対価”すべてで貢献することを選択した。バーディー1個につき10万円の義援金も決定。目標の2億円到達を目指し、4月7日開幕のマスターズから賞金を積み上げる。

 被災者の力になりたい思いが、ようやく「形」にできた。震災発生以来、険しい表情を浮かべることが多かった石川だが、この日は「正直、スッキリしてます」と、柔和な笑みが広がった。19歳が決断した支援法は、今季日本ツアーの獲得賞金全額(海外メジャー4試合分も含む)の寄付。併せてバーディー1個につき10万円の義援金も決めた。昨年なら1億8646万1479円の高額になる。

 石川は「もしも、試合で賞金を取れなければゼロになってしまう。でも、できるという確信があるし、自分でもワクワクする。目標は2億円です」と宣言した。米国にいてもテレビで流れる衝撃的な映像に、心を痛める日々が続いていた。家族の無事を確認できても、気持ちが休まる日はなかった。

 福島県いわき市在住の知人は現在、茨城県水戸市に避難している。「正直、被災地の全部が元通りになるのは大変だし、立て直すには長い戦いになる。自分も1度でポンッというよりは、みなさんとずっと戦っていくんだという気持ちを形にしたかった」。年間の“労働対価”すべてをささげる意図を、そう打ち明けた。

 毎日チェックするインターネットで、いろんな著名人の支援活動を見てきた。チャリティー基金「まけるな日本」を立ち上げた宮里藍からはメールをもらった。師匠の尾崎将が募金箱を持って自ら街頭に立ち、男子ゴルフ界の支援活動の遅さに警鐘を鳴らした記事も読んだ。その度に「自分も早く動きたい」と思ってきた。

 父勝美氏や各スポンサーなどと慎重に支援法を協議した末に、賞金全額を寄付することで話がまとまった。「自分のゴルフのために使うお金は十分足りているし、まだ蓄えもある。獲得賞金は、自分だけのものじゃない。(賞金全額寄付が)一番自分にとってプラスになるお金の使い方かなと思う」と、うなずいた。

 米ツアーで2週続けて予選落ちしているが、これで少し心の中のモヤモヤが晴れた。被災者へ送る獲得賞金は、4月7日開幕の次戦マスターズ(オーガスタナショナルGC)からが対象となる。過去2年連続で予選落ちしているが、仮に優勝すれば135万ドル(約1億800万円=昨年実績)の巨額賞金を送ることができる。「苦しんでいるみなさんへ獲得賞金を渡せると思えば、気合が入る」。日本の復興のためだと思えば、厳しい展開になっても我慢できるはず。極限まで気力を高め、大一番へ挑む。