<米女子ゴルフ:HSBC選手権>◇最終日◇2月28日◇シンガポール・タナメラCC(パー72)◇賞金総額130万ドル(約1億1700万円)優勝19万5000ドル(約1755万円)

 23年ぶり日本人賞金女王へ、最高のスタートだ。宮里藍(24=サントリー)が、米女子ツアー44年ぶり史上5人目の開幕2連勝を飾った。首位タイでスタートし、連続ボギー発進で後退したが、11番からの3連続バーディーなどで再浮上。7バーディー、4ボギーの69で回り、通算10アンダーの278で、2位に2打差をつけて優勝した。過去開幕2連勝を達成した4人は、全員が世界殿堂入りしている。偉大な先人と肩を並べた宮里が、87年岡本綾子以来の日本人2人目の米ツアー賞金女王へ好発進した。横峯さくら(24)が9位、前日3位の上田桃子(23)は15位に終わった。

 感激の涙も、喜びの涙もなかった。優勝を争ったカー(米国)の自滅もあり、最終組の宮里は2打差の首位で最終18番を迎えた。2メートルのバーディーパットこそ外したものの、きっちりパーパットを決めた。先週のホンダPTT・LPGAタイに続く開幕2連勝。余裕の笑みで同組の上田らと抱き合う姿には、王者の風格が漂っていた。

 最悪のスタートだった。1番から連続ボギーで首位から陥落した。6500ヤードを超す長距離で、フェアウエー、グリーンとも大きくうねりのある難コースに、出だしから苦しんだ。しかし、気持ちは乱れなかった。「出だしがボギー、ボギーだったけど、すごく落ち着いていた」。

 首位に返り咲いた後半スタートの10番でもボギーをたたいたが、動じなかった。11番で6メートル、12番は12メートル、そして13番で5メートルのバーディーパットをねじ込んだ。酷暑も加わり、ボギーとした14番のティーグラウンドでは「クラっときて倒れるかと思った」が、踏ん張った。16番パー4でグリーン前の花道から80センチにつけてバーディーを奪って単独首位に立った。根比べに音をあげたように、優勝を争ったカーは17、18番と連続ボギーをたたき自滅した。

 オフのメンタルトレーニングの効果が出た。08年から女王ソレンスタムを教えた2人のメンタルコーチと契約。今季開幕前はミスショットしても笑顔を保つ、強い心を目標にトレーニングを積んだ。「後半はどんどん集中力も高まって、いいパットがたくさん決まった。集中して、地に足をつけていたから入った」。

 どうしても勝ちたい理由もあった。この日は長兄聖志の33歳の誕生日だった。試合前、聖志から「今日はオレの誕生日。まあ、それはどうでもいいけど、頑張れよ」と電話があった。聖志にはスランプの時に相談に乗ってもらうなど、心の支えにしてきた。その兄に最高の誕生日プレゼントを贈ることができた。

 これまで開幕2連勝を成し遂げていたのは、通算82勝のライトら世界殿堂入りした4人だけ。宮里はその偉大な先人と肩を並べた。さらに難コースの今大会を制した08年オチョア、09年申ジエともに、その年の賞金女王を獲得している。87年の岡本以来23年ぶりの日本人賞金女王も現実味を帯びてきた。

 次戦は国内ツアー開幕戦のダイキンオーキッド・レディース(3月5日開幕、沖縄・琉球GC)に3年ぶりに出場する。「日本ツアーは3日間で、コースも天気も変わる。どうなるか分からないけど、わたしは同じことをやるだけ。フェアウエーに打って、グリーンに乗せて、パットを決めるだけです」。どこまでも冷静な24歳の勢いは止まりそうもない。