<女子ゴルフ:アース・モンダミン・カップ>◇最終日◇29日◇千葉・カメリアヒルズCC(6516ヤード、パー72)◇賞金総額1億4000万円(優勝2520万円)

 酒井美紀(23=国際スポーツ振興協会)が、通算17アンダー271で並んだ賞金ランク1位のアン・ソンジュ(26)とのプレーオフを制し、ツアー初優勝を果たした。これまで再三上位に入りながら優勝が遠く、同年代や年下の選手たちに先を越されてきた。それでも焦ることなく、毎年バーディー合戦の今大会でも確実にフェアウエーキープ、パーオンを重ねるマイペースなゴルフで初勝利をつかんだ。

 プレーオフ2ホール目。酒井は50センチのウイニングパットを沈めると、手で顔を覆って涙した。

 酒井

 決めれば優勝と分かっていたけど、決めた後急に「あれ?

 勝ったのかな?」と心配になった。アンさんが池に入れたところからの流れを、頭の中でものすごいスピードで振り返りました。それでようやく、本当に勝ったんだなと。

 マイペースを貫いた。プレーオフが行われた18番パー5は、飛距離のあるアンは2オンを狙ってくるホール。しかし酒井は「ラフから50ヤードよりも、フェアウエーから100ヤードの方が得意」と確実に刻む方を選んだ。2オン目指してドライバーを強振したアンは、右の池に落としてボギー。勝利の女神は、着実に歩む酒井にほほえんだ。

 10年日本女子アマ優勝のキャリアを引っさげ、同年プロ転向。早くから上位に何度も顔を出してきた。しかし3月のヨコハマタイヤ・プロギア・レディースで、プレーオフで一ノ瀬に敗れるなど、初優勝まであと1歩届かずに来た。その間、成田美寿々や堀奈津佳、比嘉真美子ら年下の選手が次々とツアーで優勝した。

 酒井は「まあ、頑張ってくださいという感じ」と意に介さなかった。小学生の時には、周囲がショットをまっすぐ飛ばそうと練習を重ねる中、1人アイアンでの左打ちの練習を重ねていた。姉でキャディーの美香さんは「ラウンド中、左打ちで林の中から出せなかったのが悔しかったみたいで…。とにかく昔から、人と同じペースで練習をするタイプじゃなかった」と当時を振り返る。

 最終日前夜。酒井は緊張するどころか、父正孝さんと「スタート時間がこれなら、午後5時から東京ドームで始まる(大ファンのアイドルグループ)嵐のイベントに間に合う」と話し合っていたという。「優勝して会場を出るのが遅くなることを考えていませんでした」と明かして笑わせた。マイペースを守りきって、酒井が同世代のライバルに肩を並べた。【塩畑大輔】

 ◆酒井美紀(さかい・みき)1991年(平3)5月24日、福島県生まれ。ゴルフ練習場経営の父正孝さんと、姉美香さんの影響で、8歳でゴルフを始める。07年全国中学校選手権、10年日本アマで優勝。10年プロテストを3位で合格し、プロ転向。11年にはいわき市の自宅が東日本大震災で被災した。趣味は嵐と関ジャニ∞のグッズ集め。165センチ、78キロ。血液型A。