羽生に続くジュニア世界一だ。男子でショートプログラム(SP)1位の宇野昌磨(17=中京大中京高)が、4回転ジャンプのミスをカバーする修正力を見せ、フリー2位の合計232・54点で初優勝した。日本男子の優勝は5人目で、10年大会を制したソチ五輪金メダリストの羽生結弦(20)以来5年ぶり。18年平昌五輪への大きな1歩を刻んだ。SP7位の山本草太(15)も3位に入り、初めて表彰台に日本人2人が立った。

 演技開始50秒過ぎ、2本目のジャンプが近づいてきた。「ここで攻めないとどうにもならない」。宇野の腹は決まった。漆黒の衣装をはためかせ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳ぶ。流れるような着氷をみせ、勝利につながるリズムを生んだ。

 演技直前だった。「優勝」の2文字が頭をよぎり、「腰が引けた」。6分間練習までの動きの良さが一転する気の迷いが、冒頭の4回転トーループを乱れさせた。今季習得し、高い確率で成功を収めていた武器は、踏み切りのタイミングが合わず。3回転の判定にダウングレードとなり、実質的には2回転になった。10点以上稼ぐはずが、0・70点と大失敗となったが、そこから「攻め」に出たところに勝機があった。

 「最後まで気持ちを切らさずにまとめられた」。強さの要因は、その集中力にある。樋口コーチは「滑り終わると、昌磨は『どんな演技しました?』と聞いてくる。覚えてないんです。きっと演技中は違う世界にいっているのかな」と明かす。覚えがないほど演技にのめり込み、力を発揮できる。高い修正能力もそのたまもの。終盤に予定していた連続3回転ジャンプでは、跳びすぎ違反を避けるため、後半を2回転に切り替える冷静さも光った。

 今大会の過去の日本人優勝者は02年高橋大輔、05年織田信成、06年小塚崇彦、10年羽生結弦。全員が五輪に出場し、羽生は金メダル、高橋は銅メダルを獲得。昨年12月のジュニアグランプリ・ファイナルとの2冠を達成した宇野にも五輪メダルは現実的な目標。「やることはまだまだある。きょうもまた勉強になった」。来季、満を持しシニアに挑む。

 ◆宇野昌磨(うの・しょうま)1997年(平9)12月17日、名古屋市生まれ。5歳で競技を始める。昨季は世界ジュニア選手権5位。今季は全日本ジュニア選手権で初優勝し、初出場のジュニアGPファイナル優勝、全日本選手権2位と躍進。浅田真央を育てた山田満知子、樋口美穂子両コーチに教わる。158センチ、48キロ。