【ラスベガス(米国)6日=荻島弘一】女子レスリング界の女王2人が、正反対のアプローチで五輪4連覇を目指す。リオデジャネイロ五輪出場枠のかかる世界選手権は7日、米ロサンゼルスで開幕。女子53キロ級の吉田沙保里(32=ALSOK)は勝負にこだわり、同58キロ級の伊調馨(31=ALSOK)は内容を重視する。現地初のマット練習後に正反対の言葉を発した2人だが、ともに来年のリオ五輪を見据えていた。

 ホテルの宴会場にマットを敷き詰めた練習場で、吉田と伊調は世界の注目を浴びた。前日にラスベガス入りした後の初練習、吉田はチームの先頭で大きな声を出し、伊調は黙々と体を動かした。約1時間半の練習を終えた吉田が「不安や緊張はある。勝ちにこだわる」と話せば、伊調は「いろいろなタイプの選手と1回でも多く試合がしたい」と内容を重視して言った。

 勝負にこだわって記録を積み重ねる吉田は、目立つことが好きでイベントや取材にも積極的。勝敗や記録に無関心な伊調は、目立つことも嫌で取材も苦手。吉田の練習相手は大学の後輩など女子だが、伊調は男子コーチ。海外メディアの取材を受ける吉田に対し、伊調は海外の男子トップ選手の練習を見ながら「興奮します」と目を輝かせた。

 練習を見つめたALSOKの大橋監督は「性格や考え方は正反対、一緒に練習しているのも見たことがない」と話した。もっとも、ライバル意識もないし、仲が悪いわけでもない。「今でもいい先輩と後輩。互いに嫉妬心もなく、思いやる。不思議ですね」と同監督。登り方は違っても目指すのは同じ五輪4連覇という頂。必ず通過しなければならないポイントが、今大会の優勝だ。