スーパーラグビー(SR)のレッズ(オーストラリア)に所属するFB五郎丸歩(30)が8日、自身のブログでフランス1部リーグ「トップ14」のトゥーロンで8月からプレーすると発表した。1年契約で、両者が合意すれば2年目も継続できるオプション付き。チームマネジャーのトム・ウィットフォード氏(44)とコーチのポール・ストリジョン氏(34)は来日した際に日刊スポーツの取材に応じ、「五郎丸がいれば優勝できる」と獲得の理由を語った。

 五郎丸のトゥーロン移籍に向け、ウィットフォード氏とストリジョン氏は先月、極秘で来日していた。都内で本紙の直撃にも、落ち着き払った様子で笑みを絶やさず取材に応じた。

 まず、五郎丸がトップ14でどこまでやれるのか? との質問にウィットフォード氏は「まだ何も決まっていない」と言いながらも、「チャンスは大いにある」と語った。特に代名詞のキックについては「期待は高い」と言う。今季のトゥーロンは16勝10敗でリーグ2位だった。そのうち5点差以内の敗戦が7試合にものぼった。「キック成功率の低さが原因で接戦を落としている」と明確な課題が見えたことで、「五郎丸がいれば、我々は優勝できる。成功率85%を達成できる選手はそういない」。

 五郎丸は今季レッズで12試合のうち先発出場は3試合。出番が少なかったことについては「SRは五郎丸に合っていない。キックがあまり重要でないからだ」と話した。実際にSRと欧州リーグではプレースタイルが異なる。華やかなプレーでトライを狙う傾向が強いSRに対し、欧州ラグビーはキックでの競り合いが多く、その成功率が勝敗を分けやすい。

 また、SRで出番が減った要因の1つとされる言葉の壁についても心配はないようだ。多国籍軍のトゥーロンでは英語がメインながら、日本語での通訳サポートに加え、英語の教育制度もある。ウィットフォード氏は「オーストラリアでは英語が日常だから、会話ができなければ選手のせいなのかもしれない。しかし我々は違う。会話のせいでプレーに支障が出るなら、それはチームのせいだ。英語が苦手だとしても、そのような選手は初めてではない。そこまで考えて投資をしている。言葉の問題だけでプレーできないのはばからしい」と言い切った。

 5月下旬に右の肩鎖関節を脱臼した五郎丸はリハビリ中で、SRのシーズン終了後の7月下旬にチームに合流予定。ケガの不安を抱える五郎丸に対し、ストリジョン・コーチは「選手1人1人の体調をチェックして、個別のトレーニングメニューを作っている」とおもんぱかった。2年ぶりの優勝を目指すトゥーロンにあって、五郎丸は貴重な戦力として期待されている。

 ◆五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)1986年(昭61)3月1日、福岡市生まれ。佐賀工-早大-ヤマハ発動機。ポジションはFB。185センチ、99キロ。代表キャップ数は57。

 ◆トップ14 1892年に発足したフランスリーグ。シーズンは8月から翌年6月。第1次世界大戦と第2次世界大戦の影響で中止された1915~19年と40~42年を除き、毎年行われている。14チームによるホームアンドアウェー方式の総当たり戦で1次リーグを行い、上位6チームがプレーオフのトーナメント戦で優勝を争う。下位2チームは下部リーグに降格。

 ◆トゥーロン 港町トゥーロンを拠点に、1908年創設。31年シーズンでの初優勝を含め、優勝4回、準優勝7回。資金力に恵まれ、世界ランク1位ニュージーランド代表で103キャップを誇るCTBノヌーら各国の有力選手を多数抱える。現監督はフランス代表を率いて03、07年W杯で4位に入った経験を持つベルナール・ラポルト氏。本拠地はスタッド・マイヨール。ユニホームのメインカラーは赤。