世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームは9日、1000人を超えるロシア選手が組織的な隠蔽(いんぺい)に関与し、30以上の競技で陽性反応の隠蔽があったと認定した最終報告書を公表した。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は「このように高度な不正システムに関わった選手や関係者はどんな形でも五輪から永久追放されるべきだ」と強く非難する声明を発表した。

 調査チームは2014年ソチ冬季五輪と12年ロンドン夏季五輪に関し、ロシアで国ぐるみの不正があったと指摘。悪質な実態に国際的な批判の声が改めて出ており、18年平昌(ピョンチャン)冬季五輪へのロシア選手の参加や、同年のサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会開催に影響する可能性も出てきた。

 一方、ロシアのスポーツ省は最終報告書が示すような国家ぐるみのドーピング計画はないと全面否定する声明を出した。

 IOCはソチ五輪に出場したロシア選手から採取した254の全ての尿検体を再検査し、ロンドン五輪でも参加した全てのロシア選手の検体を再検査すると発表した。

 タス通信によると、ロシア・オリンピック委員会のジューコフ会長は平昌五輪にロシア選手が出場するには追加の検査が必要との認識を示した。

 マクラーレン氏が責任者を務める調査チームの最終報告書は、ロシアが12年ロンドン五輪前に陸上や重量挙げの選手78人を対象に不正が発覚しないかを確認する検査を実施し、うち15人がメダルを獲得したが10人はその後メダルを剥奪されたとした。ロンドン五輪終了時、ロシアは金24個、総数82個のメダルを獲得していた。

 報告書は11年から15年にかけてロシアで組織的な不正があったとした。大会終了時、ロシアが33個のメダルを獲得したソチ五輪ではメダリスト12人の尿検査の容器にこじ開けた痕跡があったとした。