リオデジャネイロ五輪柔道男子90キロ級金メダルのベイカー茉秋(22=日本中央競馬会)が3日、都内で行われた日本中央競馬会の入社式に出席し、無差別で争う29日の全日本選手権(日本武道館)を欠場する意向を示した。

 前日2日に今夏の世界選手権(ブダペスト)の最終選考会を兼ねた全日本体重別選手権(福岡)に出場し、1回戦で払い腰を受けた際に右肩を脱臼。畳から起き上がれず、途中棄権した。

 一夜明けたこの日は、右肩に固定バンド、左胸に「ベイカー茉秋」と記されたネームプレートを付けて取材に応じた。26日後に迫る全日本選手権について「こういう形になり、出場は難しいと思っている」と話した。

 昨年2月に右肩を亜脱臼して、慢性的な痛みに悩まされてきた。リオ五輪後の同12月の稽古で再び痛めて、医師から右肩関節唇損傷と診断された。当初は今夏の世界選手権後に手術を行う予定だった。さらに、今年2月には左足肉離れでその治療もしながら稽古を行い、万全でない状態で全日本体重別選手権に臨んだ。「世界チャンピオンはまだ取っていないタイトル。五輪チャンピオンとして絶対的な王者になる」と決意して出場したが、1回戦敗退という悔しい結果になった。それでも「後悔はない。柔道や僕に興味を持ってくれた方に対して、情けないという気持ちでいっぱいです」と語った。

 全日本柔道連盟の強化委員会は1回戦敗退という結果でも男子90キロ級の“第一人者”として活躍してきたベイカーを世界選手権の「第1候補」とした。ベイカーは「まだ決断は出来ていない。一番の目標である東京五輪を視野に入れると、早い段階の手術も考えた方が良いのかなと思う。手術がベストだと思うし、するのであれば、来年の世界選手権を目指すことになると思う」と心境を明かした。

 同日午後に病院で診察を受けて、所属先などと相談した上で最終的な判断をするという。

 日本中央競馬会には39人の新入社員が入社した。新入社員の1人となった金メダリストは13日までの社内研修後に配属先が決まる。初任給では「免許を取ってから車を買いたい」。この時のみ笑顔が見えた。2日の試合後、「柔道人生で一番ボロボロ」と言ったベイカーの決断が迫られる。