女子世界初のトリプルアクセル(3回転半)ジャンパーで、92年アルベールビル・オリンピック銀メダルの伊藤みどりさん(49)が、日本勢初のGPデビュー戦優勝を果たした紀平梨花(16=関大KFSC)へ熱いエールを送った。11日は、40回目となったNHK杯を記念して「レジェンド・オン・アイス」に出演。前日10日のフリーで3回転半2本を決めた超新星へ、伝統の継承を喜んだ。

レジェンド7人の大トリ。1回転半を跳んだ伊藤さんが、余韻そのままに16歳の紀平をたたえた。88年のNHK杯で国際大会における女子初の3回転半を成功させてから、ちょうど30年。ニッコリ笑った先駆者は「アクセルといえば日本。引き継いでいってもらえるのはうれしい。世界は4回転を跳んでいるので、それ(3回転半)を武器に変えていってもらいたい」と温かいまなざしを向けた。

会場には伊藤さんの全盛期の映像が流れ、回転不足と無縁な3回転半に場内はどよめいた。「同じトリプルアクセルでも、私はダイナミック。(浅田)真央ちゃんは高さがある。紀平さんは軽やかに『ポンッ』と跳びますよね」。時代は移り変わっても、国際スケート連盟公認大会での成功者はわずか9人。16年9月に7人目として名を連ねた紀平の武器を「世代に合ったトリプルアクセル。簡単そうに、今どきの回転軸で跳んでしまう。効率の良い跳び方をマスターしています」と細かく分析した。

一方の紀平も伊藤さんを尊敬する。1カ月前には「あんなに高く跳ぶと着氷も難しいと思うんですが、安定しているのがすごい。(出来栄え点で)プラス5をもらえる。高さも出していきたいと思っています」と目を輝かせていた。

伊藤さんの努力の結晶を浅田さんらが引き継ぎ、今は16歳がそのバトンを大事に抱える。伊藤さんはこう続けた。「世界のトップを目指して、戦っていってもらいたい」。無限の可能性を秘めた紀平の歩みを、見守っている。【松本航】

◆伊藤みどり(いとう・みどり)1969年(昭44)8月13日、名古屋市生まれ。後に浅田真央、宇野昌磨らを指導する山田満知子コーチに師事し、85年から全日本選手権8連覇。88年カルガリー五輪5位。89年世界選手権で日本人初優勝。92年アルベールビル五輪銀メダル。同年引退。04年3月、日本人初の世界殿堂入り。身長145センチ。