男子シングルス世界ランク1位の桃田賢斗(24=NTT東日本)が同6位で17年世界選手権覇者のビクトル・アクセルセン(25=デンマーク)を2-1で破り、同種目の日本勢初優勝を飾った。

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勝利の瞬間、激戦を制した桃田は力強く何度も拳を握った。「誰もが取りたいタイトルを取ることができて自信になった。苦しかったが、楽しくプレーできた」と笑顔を見せた。3年ぶりの出場となった桃田。決勝の相手はジュニア時代からともに戦っている、デンマークのアクセルセン。お互いをよく知るが、対戦成績は桃田の9連勝中と相性が良く、完全アウェーの中、世界ランク1位の貫禄を見せつけた。

第1ゲームは、前後に揺さぶられながらも、得意のレシーブでしっかり対応。中盤以降は長いラリーを我慢しながら相手のミスを誘い、21-11で奪った。第2ゲームは、高身長のアクセルセンの強打に苦しめられ、15-21と今大会初めてゲームを奪われた。

勝負の第3ゲームは、一転して強いショットを多用し攻撃のリズムを変えた。スマッシュを決めると何度もガッツポーズをして雄たけびを上げた。アクセルセンの強打を拾いながら、勝負どころでは力強いスマッシュでポイントを奪った。それでも冷静さは失わず、正確なレシーブと精度の高いヘアピンで点差を広げ、21-15で勝利した。

今季初戦となった1月のマレーシアマスターズでは西本拳太に1-2でまさかの敗戦。「目が覚めた」という桃田は2戦目のインドネシアマスターズで調子を取り戻して準優勝。前週のドイツオープンでも安定した戦いで優勝した。「試合慣れという意味でもプラスに働く」と、良い流れのまま今大会に乗り込んだ。

3年ぶりの出場となったが「歴史ある大会で緊張感がある」という中、今年のテーマ通りのスピードを重視した攻撃で1ゲームも失わずに決勝まで勝ち上がった。ミスをしても悔しがる表情を見せず、素早く切り替え、流れを断ち切る。緩急を付けて駆け引きをしながら勝負どころでスマッシュを決める。まさに王者の戦い方で相手を翻弄(ほんろう)してきた。

試合ごとに支えてくれる周囲への感謝を口にする桃田。試合前には「みんなのために最後の試合ですべて出し切りたい」と語っていた。所属チーム、スタッフ、ファン、多くの人の思いを、120年の歴史ある大会の優勝という最高の形で応えた。5月からの五輪レースに弾みをつけた桃田は東京五輪で金メダルを取るまで世界1位を譲らない。