競泳男子200メートル背泳ぎで入江陵介(19=近大)がマークした世界新記録が公認されない可能性が出てきた。スポーツ用品メーカーのデサントは20日、入江が世界新を出した10日の日豪対抗(キャンベラ)で着用した同社製の水着が、国際水泳連盟(FINA)が19日に発表した認可水着のリストに含まれず、修正した上で再提出を求められたと発表した。FINAは記録公認の条件として認可された水着の着用を定めており、入江が出した1分52秒86は「幻の世界新」となるかもしれない。

 10日の日豪対抗競泳の男子200メートル背泳ぎで、それまでの世界記録を1秒08も上回る1分52秒86を出した入江が着用していた水着は、ルールに抵触するとみなされた。FINAは19日、世界のメーカー21社が申請した今季の水着の審査結果を公表した。348タイプのうち202タイプを認可し、10タイプを却下。入江が着用したデサント社製の水着を含む136タイプについては、6月19日までに修正した上で再提出するよう求めた。

 不認可の理由について、FINAから通知を受けたデサント社は「水着に空気をためる効果を発揮する構造を作ってはいけないというルールに抵触した」と説明。「着用いただいた選手のみなさんには結果、大変ご迷惑をお掛けすることとなり、誠に申し訳なく思います」とする中西悦朗社長の談話を発表した。

 関係者によると、入江が着用した水着には水や空気を通さないラバー素材が使われていた。昨年水泳界を席巻した英スピード社のレーザー・レーサーが体を強く締めつけて体積を減らすことで水の抵抗を小さくするのに対し、ラバータイプは「透水性がない素材で揚力感が得られる」(あるメーカーの担当者)のが特徴。FINAが3月に導入した「厚さ1ミリ以下」などの規定は満たしていたが、水着と体の間に空気がたまることによって「浮輪」のような効果が出て、浮力が増大する可能性があると問題視されたようだ。

 FINAは記録公認の条件として認可された水着の着用を定めており、状況によっては入江の記録が世界記録として認定されない可能性も出てきた。FINAのアドレガ広報部長は「手続き中の事例であり、コメントできない」と、公認の見通しについて言及を避けた。マルクレスク事務局長は公認手続きについて「通常2、3週間はかかる」との見通しを示した。

 デサント社によると、入江と同様のラバー素材を使った同社製水着を着用した選手が、4月の日本選手権で13個の日本新を樹立。これらの水着は今回、いずれもFINAから再提出を求められたという。