【秦皇島(中国)=阿部健吾】最強の援軍がやってきた。「南海キャンディーズ」のしずちゃんこと、ミドル級の山崎静代(33=よしもとクリエイティブ・エージェンシー)は今日14日に、シャフトーザ・ニザモワ(ウズベキスタン)との初戦を迎える。娘のために、飛行機嫌いの母由美子さんが人生2回目、30年以上ぶりの空路で父正英さん(67)と中国入り。声援を背に、ロンドン五輪出場のアジア枠「1」を目指す。

 よく似た大柄な父に、娘によく似た声で話す母。山崎にとってこれ以上ない味方が日本からやってきた。会場の外で母由美子さんが「娘に会うなり『飛行機大丈夫だった?』と心配されましたよ」と笑顔で切り出した。無理もない。母が飛行機に乗るのは人生2回目。父正英さんによると「本当に嫌いで、娘が生まれる前。新婚旅行で北海道に行った時以来ですねえ」。30年以上前で、海外はもちろん初めて。母は「命懸け。決死の覚悟ですよ」と真剣な目で話した。

 現地入りした11日夜、娘に会った。ボクシングの話は一切なし。「お守りとかも持ってきてません。僕らが来ることでリラックスしてほしかった」と正英さん。母はいま、娘を「おい、悟空」と呼ぶ。山崎が大好きな漫画「ドラゴンボール」の主人公の名前。「悟空はいつも戦いを楽しんでいるでしょ。しんどい練習をしたんだから、あとは楽しめばいい」との意味を込めている。

 山崎はこの日、約1時間の最終調整を終え、他階級の仲間の応援に駆けつけた。「練習は集中できました。頑張ります」と言葉に力を込めた。今大会で五輪出場を決めるにはアジア最上位になる必要がある。初戦の相手はキックボクシング歴12年。両親の後押しも背に、大一番に出陣する。