【ロンドン(カナダ)13日=阿部健吾】宿命の日韓ライバル対決「第2章」が幕を開ける。フィギュアスケートの世界選手権がカナダ・ロンドンで開幕した。3年ぶり3度目の女王を狙う浅田真央(22=中京大)は12日に現地入り。午後の公式練習でリンクの感触を確かめたが、同じ会場には10年バンクーバー五輪金メダルの金妍児(22)の姿があった。同舞台で競うのは11年大会以来2年ぶり。ソチ五輪まで1年。枠取りがかかる世界一決定戦で、再び氷上の熱き戦いが始まる。

 「1分の共演」だった。練習を終えてファンにあいさつする浅田と、次グループでリンクを滑り始めた金。約60秒間、2年ぶりに同じ氷の上に乗った。会話はなかった。だが、互いに特別な存在と認める2人には、心に期すものがあったはずだ。この1分から、1年後の、そして2度目の夢舞台での決戦への幕が開く。

 「競り合うことは自分を高められるか?」。練習後、取材陣の質問に浅田は答えた。

 浅田

 そうですね。やはり昔からたくさん注目されてきてますし、良いライバルがいることで成長できる部分もたくさんあります。プラスマイナスはあると思うんですけど。

 名前は口にしなかったが、「プラス」面を期待するように笑顔ものぞかせた。

 練習後「復帰して重圧はないか?」と問われた金は、自ら相手の名前を出して答えた。

 金

 浅田真央さん自身の存在は重圧ではないですが、メディア、ファンの視線などは負担でした。いまは、あまり気にしないようにしている。いつも褒められ、それに見合う演技をしなければならない気持ちも大きかった。いまはそれより軽い気持ちで、正しい演技をしなければならないことが重圧なので。

 この日、曲をかけて浅田が滑る姿をリンクサイドから見つめていた。練習前の準備運動をしながら、何を感じていたのだろうか。

 浅田は今季5戦全勝。金の復帰後、気持ちを問われれば「自分の最高のレベルをSP、フリーも決められるようにすることが目標です」と己との闘いを強調してきた。その言葉はこの日も聞かれた。

 そのため、フリーの「白鳥の湖」を“最終形”に仕上げてきた。2番目だった代名詞トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を冒頭に、3番目の連続3回転を2番目に変更。「足の状態も良い状態なので(疲労がないので)、成功率は高くなっていると思います」と自信をみせる。

 3年前の冬、カナダ・バンクーバーで1つの章を終えた2人の物語-。再び、この地から新たな章がつづられていく。