ラグビー日本代表のSH田中史朗(29=パナソニック)が、世界の一流選手を集める英国の名門バーバリアンズに選出された。日本からは92年に林敏之、96年に元木由記雄が選出されて以来3人目。本場ニュージーランドのプロチーム、ハイランダーズでもプレーする身長166センチの小兵は、11日のNEC戦でも勝利に貢献。バーバリアンズの一員として、11月の英国遠征に向けて胸を高鳴らせた。

 田中のラグビー人生に新たな功績が刻まれた。名門バーバリアンズのメンバーに選ばれ、11月1日にオーストラリア戦、4日にイングランドの強豪レスター・タイガース戦に臨む。日本ラグビー界を支えた林、元木に続く快挙となった29歳は「とても光栄。人生に1回あるかないかのこと。子供たちに夢を与えられたと感じる」とうれしそうに話した。

 バーバリアンズは、いわば世界選抜のようなチーム。100年以上の歴史を誇り、今回もオーストラリア代表WTBニック・カミンズら名だたる選手がそろう。「話を聞いて即断した。不安もあるけど、全力で日本ラグビーをアピールしたい」と意気込む。田中を選出した監督は、前日本代表ヘッドコーチのジョン・カーワン氏。「そういうコネもあるんじゃないですか」と謙遜して笑うが、ハイランダーズの一員として世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」でもプレーする実力が評価された。主将のフッカー堀江にも「日本人もできると見せられるのはフミさん(田中)しかいない」と背中を押される。

 「やることはいつもと一緒。自分がスペースをあけて、トライを演出したい」と話す。持ち味は、この日のNEC戦でも見せた。空いたスペースへのキックでWTB北川の先制トライをアシストすると、後半にも巧みなステップで守備網に穴をあけ、トライの起点を作った。

 試合後は最後までスタンドでサインを求められ、会場の外で待つファン1人1人にも丁寧に対応する。人懐っこい愛されキャラが、小柄な体で大舞台に挑む。【岡崎悠利】

 ◆田中史朗(たなか・ふみあき)1985年(昭60)1月3日、京都府生まれ。ポジションはSH(スクラムハーフ)。洛南中1年でラグビーを始める。伏見工高、京産大を経てパナソニックに加入。12年にはニュージーランドのハイランダーズに入団し、世界最高峰のラグビーリーグ「スーパーラグビー」にも参戦中。日本代表キャップ数は44。166センチ、72キロ。

 ◆バーバリアンズ

 1890年創設。ホームグラウンドはなく、遠征や試合の時にだけ世界各国から選ばれた一流選手が招待されチームを結成する。ジャージーの柄は白と黒を基調にしたボーダーで、ソックスは各選手の所属チームのものを使う。強豪国や名門クラブとの試合のほか、チャリティーマッチも行う。96年には阪神・淡路大震災の復興支援のため来日した。バーバリアンは「野蛮人」を意味する。