<大相撲九州場所>◇千秋楽◇27日◇福岡国際センター

 大相撲九州場所後に大関に昇進する関脇稀勢の里を発掘し、一から鍛え上げたのが、7日に59歳で急逝した鳴戸親方(元横綱隆の里)だった。手塩にかけて育てたまな弟子の晴れ姿を誰よりも望み、昇進伝達式用に紋付きはかまを9月の秋場所後に新調した。

 鳴戸部屋関係者によると、稀勢の里が12勝を挙げた秋場所後、心の底からうれしそうに話していたという。「あいつは力をつけてきた。やっと大関に上がれる。もう、大丈夫だ…」。

 弟子の大願成就を確信した親方は、周囲に「あいつが大関になるまでは、絶対に袖を通さないぞ」と宣言し、大切に保管した。11日に営まれた告別式では、無念の思いでひつぎに眠る師匠の大きな体に真新しい紋付きはかまが掛けられ、参列者の涙を誘った。

 「稀勢の里」というしこ名にも大きな期待を込めていた。部屋を興して間もないころ、親交のあった永平寺の秦慧玉貫首から授けられた。稀勢の里は「親方が『これこそは』と思う弟子に、このしこ名を付けようと思っていたそうです。光栄です」と感慨に浸る。天国で見守る師匠の元へ、最高の供養となった。