<大相撲初場所>◇12日目◇22日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(28=高砂)が、関脇把瑠都(24)を巧みに寄り切り、12連勝を飾った。1場所15日制が定着した1949年(昭和24年)夏場所以降、史上5人目の全休明けの全勝優勝までのマジックを3にした。23日に予定している両国国技館前に開店する「ワールドちゃんこ朝青龍」の会見に、米CNNが取材を申請していることも判明。本場所を取材できない海外メディアも朝青龍の動向に注目し始めた。

 朝青龍が巨体の把瑠都の奇襲をものともせず、12連勝を決めた。相手は右上手狙いで変化してきたが、低く立ち合った横綱は、動きに合わせて左へと踏み込み、左前みつを引いた。同時に頭をつけて左を引き付け、右手で把瑠都の左手首を強く握りしめた。以前から「把瑠都は四つになって胸を合わせると、とんでもなく強い」と警戒していたが、攻守を一体化させてそれを防いだ。相手が左差しをあきらめた瞬間、右からおっつけての寄り切り。右でのダメ押しの後は、両手を上げる「万歳」のようなポーズを取った。

 非の打ちどころのない速攻相撲にも、支度部屋での朝青龍は淡々としていた。「まあ(相手の動きを)見ましたね。あそこで無理をして出ないで、様子を見ながら出られたのがよかった」。「変化に驚かなかったのか?」の問いには「まあ、そういうもんだろう」と返した。

 場所前はスタミナ不足を露呈したが、終盤になってもそれを感じさせない。武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)も「疲れを感じさせないね。元気なころの相撲になってきたよ」と感心しきり。72年秋場所の横綱北の富士以来、史上5人目の「全休場所後の全勝優勝」という劇的復活Vの期待も高めている。

 その勢いは海外メディアも動かした。日本相撲協会からは、場所中の両国国技館内での取材は許可されていないが、23日に予定される両国国技館前に開店準備中のちゃんこ店「ワールドちゃんこ朝青龍」に関する記者会見には、CNNも含めた海外メディアから取材申請が相次いでいるという。

 同店が注目されていることも、快進撃の原動力になっている。この日は、同店に「朝青龍」を象徴する龍の看板が設置された。関係者によると、横4・2メートル、重さ約50キロで、映画「スター・ウォーズ」などの特撮セットも手掛けた業者が数百万円で製作したという。朝青龍は国技館入りする前に同店前に車を停車。看板を車の中から見つめて関係者にVサインをした。

 残り3日。「(優勝は)あまり考えていない。1日1番だね。はい終わり」。13日目は千代大海戦に、力の限りを尽くす。【柳田通斉】