<大相撲九州場所>◇3日目◇17日◇福岡国際センター

 史上1位の幕内在位98場所目の大関魁皇(37=友綱)が、史上3人目の幕内通算800勝に到達した。大関候補の関脇把瑠都(25)を、右からの小手投げで土俵に転がして、2勝目を挙げた。今場所2けた勝利で808勝となり、元横綱千代の富士の最多記録を上回り、歴代1位に躍り出る。朝青龍(29)白鵬(24)の両横綱はともに勝って3勝目を挙げた。

 体が反応してくれた。左をこじ入れようとした魁皇は、無理だと分かった瞬間、右に動いた。把瑠都の太い左腕に巻き付けた右を振り抜き、左手でも抱えるように放った小手投げが鮮やかに決まった。場所前に出版した自伝のタイトル通りの「怪力」は健在だった。

 「ああなるとは思っていなかったけど。中途半端は一番いけないから」と淡々と振り返った。今年2勝2敗と五分の怪力大関候補を破った星は、幕内通算800勝(歴代3位)の区切り。「そんなのは関係ない。3日目終わって、明日に切り替えていくだけ」と意識はしていないが、上にいるのは804勝の北の湖、807勝の千代の富士という大横綱。今場所10勝で2人を抜く可能性も膨らむ。

 今場所は「体が動いている」と話すが、両ひざ、肩、腰など満身創痍(そうい)の体はいつ壊れてもおかしくない。両ひざは「痛み止めも効かなくなっている。朝、どうやって起きようかという日も多い」と明かす。それでも「体のケアをして、土俵に上がることが、自分の使命だと思っている」。毎日、治療通いを続けながら、けいこ場に立つ。この日朝も230キロの三段目魁ノ若相手に9番取った後「大きい相手(把瑠都)の方がやれそうだ」。その通りの展開になった。

 場所前に故郷直方市で自身が通っていた小学校、中学校を訪問、後輩から激励の色紙を手渡された。地元では魁皇が勝つと花火が上がる。「部活をしている午後5時半ごろに花火が上がると、僕たちも頑張れる。けがをおして長年、土俵に立ち続ける姿を見習いたい」という作文に感激。「気を引き締めて、しっかり頑張らないと」と決意をあらたにした。

 「大したもんだ。ケガの中で800勝は。思い切って(小手投げを)決めて、まだまだ力があるからね」と武蔵川理事長。館内の声援も、もちろん1番多い。「いろんな人に期待されて、それを力に変えないとね」。記録への挑戦はまだまだ続く。【赤坂厚】