<大相撲初場所>◇5日目◇14日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(29=高砂)が、序盤戦でつまずいた。東前頭2枚目豪栄道(23=境川)に土俵際で引き落とされ、よもやの初黒星。取組後の土俵下では左拳で土俵すそを殴り、悔しさをにじませた。横綱白鵬(24)は完勝で5連勝。平幕では稀勢の里(23)も勝って全勝を守ったが、垣添(31)は敗れた。序盤戦を終え、全勝は白鵬と稀勢の里の2人だけとなった。

 よもやの敗戦だった。朝青龍は立ち合いから鋭く踏み込み、得意の左四つを狙った。左を差して挟み込むように一気に走ったが、土俵際で豪栄道がクルリと1回転。目の前から敵が消えて、土俵外にダイブした。土俵上では苦笑いを浮かべたものの、土俵下へ下がると悔しさが込み上げてきたのか、左拳で土俵すそを殴りつけた。「勝ったと思ったけどね。すっぽ抜けちゃった…」と振り返った。

 支度部屋に戻ってからも悔しさは収まらなかった。普段なら風呂場へと直行するが、この日はテレビの前で両手を腰に当てて仁王立ちし、画面を食い入るように見つめた。取組を見終わると、付け人にも「勝ったと思ったんだけどな…」とポツリ。付け人に「(前に出る相撲で)内容は悪くなかったんじゃないですか」とうながされ、ようやく風呂場へと向かった。

 今年で30歳という節目を迎えるだけに、この1年に懸ける意気込みは並々ならぬものがある。昨年末に今年の目標を聞かれ「最低でも4回優勝」と大きな目標を掲げていた。今年から移動車を白いベンツの高級リムジンに乗り換えたが、高砂部屋関係者によると「白星が長く続くように…という願いも込めて」だという。強い決意を持って臨んだ初場所だったが、序盤戦で手痛いミスを犯してしまった。

 「最後までダメを押すぐらいの気持ちにならないとダメだな。立ち合いもよかったし、出足もよかったから安心しすぎた。右を取ればよかった。満足しすぎた…」と珍しく反省の弁が口を突いた。ここ数年は敗戦後に気持ちをうまく切り替えられず、ズルズルと負けていくパターンも多い。引きずる負けではない?

 という質問には「どういう意味だ?」とギロリ。相変わらずすごんで見せたが、その意気込みが果たして15日の土俵へと結びつくか?【山田大介】