日本相撲協会トップが初めて公の場で一連の騒動に不快感を示した。武蔵川理事長(61=元横綱三重ノ海)は、相撲界の改革を掲げる貴乃花親方の言動に「改革、改革って何をやるわけ?

 何もやってないわけじゃないでしょ」と語気を強めた。

 理事長が、一門内の騒動や個人を糾弾するのは異例。08年9月に北の湖前理事長からバトンを継いだ武蔵川体制には、役員待遇として貴乃花親方も名を連ねる。現体制の「仲間」でもあるだけに、一層、不快感でいっぱいだった。

 もともと、貴乃花親方の理事選出馬にはまゆをひそめていた。協会関係者は「理事長は快く思っていない」という。この日、二所ノ関一門の理事から現状報告を受けた武蔵川理事長は「一門内で話し合って『ふさわしい』となれば、多くの人が推薦するんじゃないの」と切り捨てた。険しい表情で「1人でどうのじゃなく、先輩の話も聞いて。一門の総意があるのだから」と続けた。

 一門制は形骸(けいがい)化が指摘され、貴乃花親方もその枠を超えた団結を叫ぶ。「先輩方がつくってきたものは大事だと思う。何でもかんでも変えたら伝統の魅力がなくなる」。改革VS伝統。理事選挙をめぐる駆け引きを超えて、角界全体を巻き込んだ世代間闘争になりつつある。